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季語と歳時記

きごさい歳時記

作成者アーカイブ: dvx22327

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薔薇(ばら) 初夏

季語と歳時記

【子季語】
西洋薔薇、しようび、花ばら、薔薇園、そうび
【関連季語】
茨の花、薔薇の芽、秋薔薇、冬薔薇
【解説】
薔薇は初夏、美しく香り高い花を咲かせる。茎には鋭い棘がある。観賞用に植えられるほか香水などにも利用される。花の色も形もさまざまで、園芸登録されているものでも一千種を超える。和名の「ばら」は、棘のある植物「うばら」「いばら」が転訛したもの。
【来歴】
『毛吹草』(正保2年、1645年)に所出。
【文学での言及】
我はけさうひにぞ見つる花の色をあだなるものといふべかりけり 紀貫之『古今集』
【科学的見解】
バラは、一般的に総称として使われており、庭園栽培や切り花として利用されている種は、セイヨウバラと呼ばれている。セイヨウバラは、古い時代に野生バラから改良を加えることで生み出されてきた雑種であり、現在では生み出されて園芸品種は数千を超える。花は、元々年一回の開花であったが、中国のコウシンバラとの交配で、年数回開花する四季咲きの性質を獲得し、日本の野生種であるノイバラとの交配で、細く高く枝を伸ばすつる性の性質が加わり、その品種群の性質は色彩から香りや形まで多様化している。(藤吉正明記)
【例句】
針ありと蝶に知らせん花薔薇
乙由「類題発句集」

一輪ざしに活けたる薔薇の二輪哉
正岡子規「子規全句集」

病癒えて力無き手や薔薇を折る
正岡子規「子規全句集」

己れ刺あること知りて花さうび
高浜虚子「六百五十句」

トランプを投げしごと壺の薔薇くづれ
渡辺水巴「水巴句集」

反射炉を守りて薔薇を剪り呉れし
川端茅舍「華厳」

薔薇むしる垣外の子らをとがめまじ
杉田久女「花衣」

手の薔薇に蜂来れば我王の如し
中村草田男「長子」

咲き切つて薔薇の容(かたち)を超えけるも
中村草田男「美田」

おうおうと金春家いま薔薇のとき
森澄雄「鯉素」

眠る嬰児水あげてゐる薔薇のごとし
飯田龍太「山の木」

紙箱に莟の薔薇を剪りそろへ
長谷川櫂「果実」

カテゴリー: 1基本季語, g植物

葉桜(はざくら) 初夏

季語と歳時記

【子季語】
桜若葉、花は葉に
【解説】
初夏、花が散って若葉となったころの桜をいう。花が散って葉桜になってしまったという惜しむ思いと、桜若葉の美しさを愛でる思いが交錯する季語である。【子季語】の「花は葉に」は、葉桜を眺めながらも散り果てた花を忍ぶ思いがある。
【来歴】
『俳諧通俗誌』(享保2年、1716年)に所出。
【例句】
葉ざくらや南良に二日の泊り客
蕪村「新花摘」

葉桜や碁気になりゆく南良の京
蕪村「蕪村遺稿」

葉桜や蓑きて通ふ湯治客
前田普羅  「飛騨紬」

葉桜や雪より白き吉野葛
長谷川櫂「初雁」

葉桜のまぶしき雨を仰ぎけり
高田正子「花実」

カテゴリー: 1基本季語, g植物

余花(よか、よくわ) 初夏

季語と歳時記

【子季語】
若葉の花、青葉の花、夏桜
【関連季語】
残花
【解説】
夏になって若葉の中に咲き残る桜の花をいう。寒い地域や高い山などに見られる。立夏前の桜は残花、立夏後は余花になる。
【来歴】
『俳諧鼻紙袋』(延宝5年、1677年)に所出。
【文学での言及】
夏山の青葉まじりの遅桜はつ花よりもめづらしきかな 藤原盛房『金葉集』
【例句】
餘花もあらぬ子に教へ行神路山
太祇「太祇句選」

餘花いまだきのふの酒や豆腐汁
召波「春泥発句集」

風開く南障子や夏桜
調和「俳林不改集」

上野山餘花を尋ねて吟行す
正岡子規「子規全集」

余花の雨布団の上の鼓かな
松本たかし「松本たかし句集」

カテゴリー: 1基本季語, g植物

蝸牛(かたつむり)三夏

季語と歳時記

【子季語】
かたつぶり、ででむし、でんでんむし、まいまい
【解説】
渦巻き状の薄い殻、伸縮自在の柔らかな体。二本の角を出し、木や草をゆっくりと這う。梅雨のころによく見られる。童謡などにも唄われる。
【来歴】
『毛吹草』(正保2年、1645年)に所出。
【実証的見解】
マイマイ目陸生有肺類の巻貝の総称。渦巻状の殻を背負い、頭には二本の触角がある。その触角の長いほうの先端が目の役割をする。雌雄同体で地中に卵を産む。湿気を好み木や草に張りついて若葉などを食う。冬には冬眠する。
【例句】
かたつぶり角ふりわけよ須磨明石
芭蕉「猿蓑」

白露や角に目を持つかたつぶり
嵐雪「其便」

ころころと笹こけ落ちし蝸牛
杉風「続別座敷」

かたつぶりけさとも同じあり所
召波「春泥発句集」

夕月や大肌ぬいでかたつむり
一茶「七番日記」

親と見え子と見ゆるありかたつぶり
太祗「太祗句稿」

蝸牛いつか哀歓を子はかくす
加藤楸邨「颱風眼」

かたつむり甲斐も信濃も雨のなか
飯田龍太「山の木」

木に草に雨明るしや蝸牛
長谷川櫂「古志」

カテゴリー: 1基本季語, f動物

蟻(あり)三夏

季語と歳時記

【子季語】
山蟻、女王蟻、雄蟻、大蟻、蟻の道、蟻の列、蟻の塔、蟻塚
【解説】
夏の間、集団で食料を集める働き者の小さな虫。甘いものや昆虫の死骸などに群がる。家の中にも入り込んでくる。
【文学での言及】
イソップ物語「アリとキリギリス」
【実証的見解】
ハチ目アリ科に属する昆虫の総称である。体長は一ミリから三センチくらい。胸部と腹部の間にくびれを持つ。雌で生殖能力のある女王蟻と雄蟻、生殖能力のない雌の働き蟻とで社会生活を営む。体色は黒いものが多いが、褐色や赤色などの種類もある。繁殖行動を行う雄蟻と女王蟻は翅をもつ。地中や腐った幹に巣を作る。
【例句】
蟻の道雲の峰よりつづきけん
一茶「おらが春」

樹肌わたる蟻に早やある暮色かな
原石鼎「原石鼎全句集」

南風や生れつ失せつ蟻の城
芝不器男「芝不器男全句集」

蟻殺すわれを三人の子に見られぬ
加藤楸邨「寒雷」

大蟻の雨をはじきて黒びかり
星野立子「笹目」

山蟻や割れて真赤な桃の幹
長谷川櫂「天球」

うつくしき翅の浮かめる蟻の列
高田正子「花実」

カテゴリー: 1基本季語, f動物

まくなぎ 三夏

季語と歳時記

【子季語】
めまとひ、めまわり、めたたき、糠蚊、揺蚊
【解説】
夏、人の顔などにまつわりつく小さな羽虫。風のない日の夕暮れどきに野道や河原、林などに出てくる。人の目の中へも入り込むので「めまとい」ともいわれる。
【来歴】
『糸屑』(元禄7年、1694年)に所出。
【実証的見解】
ハエ目ヌカカ科の昆虫の総称。体長は一ミリから三ミリほどで、一部の種類の雌は、蚊と同様に人や家畜の血を吸う。蚊よりも小さく、ひとかたまりとなって飛ぶ。刺された直後に痒みや痛みはないが、あとで腫れと痒みがくる。
【例句】
蠛蠓や土塀崩れて棕櫚くらき
幸田露伴「露伴全集」

蠛蠓や多摩の山河をうごかし
川端茅舎「川端茅舎句集」

カテゴリー: 1基本季語, f動物

蚊(か)三夏

季語と歳時記

【子季語】
藪蚊、縞蚊、赤家蚊、蚊柱、蚊の唸り、蚊を打つ
【関連季語】
蚊帳、ぼうふら、春の蚊、秋の蚊、蚊遣火
【解説】
夏、人や家畜の血を吸う小さな虫。蠅同様、人に嫌われる。夜分出ることが多いが、藪蚊などは昼も出てる。蚊帳を吊ったり、蚊遣火を焚いたりして、蚊が近づくことを防ぐ。蚊柱は、蚊が交尾のために群れている状態をいう。
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
夏の夜は枕をわたる蚊のこゑのわづかにだにもいこそ寝られぬ 後京極摂政『夫木和歌抄』
『枕草子』清少納言(28段、にくきもの)、狂言『蚊相撲』
【実証的見解】
ハエ目カ科の昆虫の総称である。成虫は、細長い体型で十ミリより小さい。足は長く二枚の羽で飛翔する。雌は産卵のために人や家畜の血を吸って栄養を取るが、雄は、血を吸うことはない。水溜りなどの動かない水に卵を産み、二日ほどで孵化してぼうふらとなる。その後オニボウフラといわれるさなぎになり、卵から二週間ほどで成虫になる。マラリアや日本脳炎などいろいろな病原体を媒介する。
【例句】
わが宿は蚊の小さきを馳走なり
芭蕉「小文庫」

蚊の化やつひにあらはすタ烟  
高政「おくれ双六」

蚊や人を夜は食らへども昼見えず
調和「伊勢踊」

こころよやけふの湯あみに蚊が逃げる
来山「元の水」

群かへる蚊のかたまりややまかづら 
言水「柏崎」

うき人に蚊の口見せる腕かな
召波「春泥発句集」

蚊のこえのまつはり落つる無明かな
石田波郷「雨覆」

迂闊にも蚊の巣窟にゐるらしく
長谷川櫂「虚空」

カテゴリー: 1基本季語, f動物

蠅(はえ、はへ)三夏

季語と歳時記

【子季語】
家蝿、金蝿、銀蝿、縞蝿、青蝿、黒蝿、蝿の声
【関連季語】
春の蝿、秋の蠅、冬の蠅、蠅叩、蠅生る
【解説】
夏、食べ物などにたかる羽を持った虫。うるさくて、不潔ということで嫌われる。蠅叩きや蠅取紙などで駆除する。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
【実証的見解】
ハエ目イエバエ科、クロバエ科などの昆虫の総称。家の中の食べ物に集まる家蠅、魚の腸などに集まる縞蠅、汚物などに集まる黒蠅。他にも蒼蠅、銀蠅など種類は多い。体色は黒や青緑色。よく発達した前翅を持ち飛翔能力は昆虫類の中でも非常に高い。食べ物にたかって栄養分を接種するため、赤痢などの伝染病の媒介となることもある。蠅は汚物に卵を産みつけ、蠅の幼虫の蛆(うじ)は汚物のなかで育つ。
【例句】
うき人の旅にも習へ木曾の蠅
芭蕉「韻塞」

顔につく飯粒蠅にあたへけり
嵐雪「玄峰集」

蠅いとふ身を古郷に昼寝哉
蕪村「蕪村自筆句帳」

蠅打てつくさんとおもふこころかな
成美「成美家集」

やれ打つな蠅が手をすり足をする
一茶「梅塵八番」

庭土に皐月の蠅の親しさよ
芥川龍之介「澄江堂句集」

カテゴリー: 1基本季語, f動物

空蝉(うつせみ) 晩夏

季語と歳時記

【子季語】
蝉の殻、蝉の抜殻、蝉のもぬけ
【関連季語】
蝉、蝉生る
【解説】
蝉のぬけ殻のこと。もともと「現し身」「現せ身」で、生身の人間をさしたが、のちに、「空せ身」空しいこの身、魂のぬけ殻という反対の意味に転じた。これが、「空蝉」蝉のぬけ殻のイメージと重なった。
【来歴】
『増山の井』(寛文7年、1667年)に所出。
【文学での言及】
空蝉の殻は木ごとに留(とど)むれど魂の行くへを見ぬぞ悲しき 読人知らず『古今集』
【実証的見解】
樹皮の中で孵化した後、蝉の幼虫は地中で樹木の根から栄養分を吸って成長する。三年から十年ほど地中で過ごして蛹となり、その後地表に出て成虫となる。
【例句】
梢よりあだに落ちけり蝉のから
芭蕉「六百番発句会」

空蝉のふんばつて居て壊はれけり
前田普羅「新訂普羅句集」

うつせみをとればこぼれぬ松の膚
日野草城「花氷」

空蝉にしてやはらかく草つかむ
長谷川櫂「天球」

蝉の殻うすうすと風抜けにけり
高田正子「花実」

カテゴリー: 1基本季語, f動物

蝉(せみ) 晩夏

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♪
【子季語】
初蝉、蝉時雨、朝蝉、夕蝉、夜蝉、油蝉、みんみん蝉、熊蝉、蝉捕り、深山蝉
【関連季語】
松蝉、春蝉、法師蝉、蜩、秋の蝉、空蝉、蝉生る
【解説】
夏、樹木などにへばりついてやかましく鳴声を立てる虫。多くの蝉がいっせいに鳴く騒がしさを時雨にたとえて蝉時雨という。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
石走る滝もとどろに鳴く蝉の声をし聞けば京師(みやこ)し思ほゆ 大石蓑麿『万葉集』
【実証的見解】
半翅目セミ科に分類される昆虫の総称。樹皮の中で孵化した後、幼虫は地中で三年から十年ほど過ごして蛹となり、その後地表に出て成虫となる。地表で生活する成虫期は一から三週間程度。雄の成虫は雌を呼ぶなどのため、腹腔内を共鳴させて鳴く。鳴く時期や時間、所場は蝉の種類によって異なる。本州で一番早く出る蝉は、松蝉で春蝉とも呼ばれる。六月下旬にはにいにい蝉が鳴き始める。油蝉や熊蝉が鳴くのは梅雨明けのころである。
【例句】
やがて死ぬけしきは見えず蝉の声
芭蕉「猿蓑」

閑さや岩にしみ入る蝉の声
芭蕉「奥の細道」

いでや我よきぬのきたり蝉衣
芭蕉「あつめ句」

撞鐘もひゞくやうなり蝉の声 
芭蕉「笈日記」

蝉の音をこぼす梢のあらしかな
支孝「梟日記」

耳底に蝉はまだ啼く枕かな
蓼太「蓼太句集二編」

母と住む木陰の里や夜の蝉
素郷「発句題叢」

人病むやひたと来て鳴く壁の蝉
高浜虚子「五百句」

蝉涼し絵馬の天人身を横に
松本たかし「野守」

蟬山に墓舁ぎ入るえいほうと
森澄雄「鯉素」

幾万の蝉死に絶えて風の音
長谷川櫂「虚空」

カテゴリー: 1基本季語, f動物

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