【子季語】
蚊蜻蛉、かがんぼ、蚊の姥
【解説】
漢字で大蚊と書くだけはあり、形は蚊によく似ている。ただし血は吸わず、蚊よりもはるかに大きい。長い脚を持ち、ゆらりゆら りと飛ぶ。
【例句】
ががんぼのかなしかなしと夜の障子
本田あふひ「ホトトギス雑詠選集」
ががんぼに熱の手をのべ埒もなし
石橋秀野「櫻濃く」
【子季語】
新年句会、句会始、初運座、初披講、運座始、初懐紙
【解説】
新年になって最初の句会。一月の例会が初句会となる場合が多い。 年を新たにし、いつもより新鮮な気持ちで句座に望む。師や句友と今年の意気込みを語りあったりいつもとは違った雰囲気がある。
【例句】
松とれし町の雨来て初句会
杉田久女「杉田久女句集」
小人数の親しき仲の初句会
松本たかし「松本たかし句集」
【子季語】
事務始、初仕事、初事務
【解説】
新年になって初めて仕事にとりかかることであるが、もともとは仕事を始める式を行うことであった。かつてはたずさわる職業によって仕事始めの日は決まっていて、おおむね二日は仕事に取り掛かれるように準備をする程度にとどめ、十一日に正式の儀式をするようであった。昔の農家の仕事始めは、二日と決まっていて、朝早く起き、朝飯までの間に、藁仕事や裁縫など、それぞれの分野の仕事を形式的に行った。
【子季語】
一夜飾り、輪飾り
【解説】
新年に年神さまを迎える準備として、注連縄を張り神聖な空間を示す。その土地によって飾るものも少し異なるが、穂俵や昆布など縁起のよいものが多い。また飾る場所も玄関や神棚のほか、台所や竈など様々である。一日飾りはよくないとされ、暮の三十日までに飾る。
【例句】
宵ひそと一夜飾りの幣裁ちぬ
富田木歩「富田木歩句集」
【解説】
冬になってはじめて降りた霜。庭や畑に初霜を見付けた時には、冬の到来を強く感じる。
【例句】
初霜や菊冷え初むる腰の綿
芭蕉「荒小田」
初霜や小笹が下のえびかづら
惟然「藤の実」
はつしもや飯の湯あまき朝日和
樗良「樗良発句集」
初霜や茎の歯ぎれも去年まで
一茶「文化句帖」
初霜に負けて倒れし菊の花
正岡子規「季語別子規俳句集」
【子季語】
愛日、暮れやすき日
【解説】
冬の太陽や日射。もしくは冬の一日のことをいう。太陽をさす場合は冬日という言い方もある。太平洋側では異常乾燥注意報など出され、日本海側では大雪による被害がもたらされることもある。
【例句】
冬の日や馬上に氷る影法師
芭蕉「笈の小文」
冬の日のさし入る松の匂ひかな
曉台「曉台句集」
冬の日の入りて明るし城の松
正岡子規「季語別子規俳句集」
ガラス越に冬の日あたる病間かな
正岡子規「子規俳句集」
六畳の奥迄冬の日ざしかな
正岡子規「子規俳句集」
山寺や冬の日残る海の上
夏目漱石「漱石全集」
旗のごとなびく冬日をふと見たり
高浜虚子「五百五十句」
冬日濃しなべて生きとし生けるもの
高浜虚子「五百五十句」
大仏に袈裟掛にある冬日かな
高浜虚子「六百句」
やはらかき餅の如くに冬日かな
高浜虚子「六百五十句」
大空の片隅にある冬日かな
高浜虚子「六百五十句」
地球一万余回転冬日にこにこ
高浜虚子「七百五十句」
椅子に在り冬日は燃えて近づき来
松本たかし「石魂」
中空で黄昏てゐる冬日かな
長谷川櫂「虚空」