【子季語】
雪の雷、雪雷
【解説】
北の地方で雪が降り出しそうな時に鳴る予兆のような雷のこと。地響きのような重い音がし、激しい雷光と雷鳴の後、雪が降り出す。
【例句】
納豆するとぎれやみねの雪起
丈草「小文庫」
月別アーカイブ: 8月 2011
木天蓼(またたび)三秋
【解説】
マタタビ科の蔓性落葉低木。山地に自生する。初夏に咲く白色五弁の花が梅に似ているため夏梅ともいう。楕円形で少しとがった 果実は熟すと黄色になる。熱湯に浸して乾燥した果実は、中風、リウマチ、強壮に効果がある。また酒肴にも珍重される。
【科学的見解】
木天蓼(マタタビ)は、北海道から九州の山地に普通に見られる植物であり、果実は昔から食用及び薬用として活用されてきた。果実は少し尖った形をしているが、コバエ類が寄生し虫こぶができると薬効効果が高まるため、薬用としてはそちらがより好まれる。近縁種としては、サルナシやミヤママタタビが存在する。(藤吉正明記)
十二月(じゅうにがつ、じふにぐわつ)仲冬
【解説】
陽暦の十二月。一年の最終月である。新年を迎える準備など何かと済ませるべきことが多く、あわただしさを感じさせる月である。
【例句】
十二月上野の北は静かなリ
正岡子規「子規句集」
人込みに白き月見し十二月
臼田亜浪「旅人」
廂より高き堤や十二月
原石鼎「花影」
菊の根分(きくのねわけ)仲春
【子季語】
菊分つ、菊根分
【解説】
春先、菊の根を掘り起こすと、親根からいくつもの細根が分かれて芽を出している。その細根についた芽を切り離して植えること をいう。
【例句】
根分けして菊に拙き木札かな
一茶「西国紀行」
垣ごしに菊の根分けてもらひけり
正岡子規「寒山落木」
菊根分眼前の死の見えざりき
長谷川櫂「虚空」
溝蕎麦(みぞそば)初秋
【子季語】
牛の額
【解説】
タデ科の一年草。日本各地の山野の湿地や水辺などに群生する。高さ四十センチほどで、葉は矛のような形をしている。八月から十月にかけて、枝先に淡い紅色の小花が十から二十個ほどまとまって開く。黒い球形の実が蕎麦に似ているため、溝蕎麦と呼ばれている。
【科学的見解】
ミゾソバは、北海道から九州の水辺に生える一年草である。本種の葉は、ほこ型をしており、その形が牛の顔にも似ていることから、ウシノヒタイという別名も有している。花序は小さな小花が頭状につき、花弁の先端が紅紫色になって美しい。似た種としては、ママコノシリヌグイ(別名:トゲソバ)やナガバノウナギツカミなどが存在する。(藤吉正明記)
杜鵑草(ほととぎす)仲秋
練炭(れんたん)三冬
【子季語】
豆炭、練炭火鉢
【解説】
粉石炭などを円筒形に固め、十個ほどの孔を開けたもの。最近まで、家庭であつかいやすい便利な燃料として重宝された。暖房や長時間の煮物などに燃料として使われる。
冬座敷(ふゆざしき)三冬
蜥蜴(とかげ)三夏
【子季語】
青蜥蜴、瑠璃蜥蜴、縞蜥蜴
【解説】
トカゲ亜目に属する爬虫類の総称。体長は大きなもので三十センチにもなるが、よく見かけるのは十センチ前後。肌はぬれて光沢があり、青や緑の縞模様がある。尾は切れやすく、切れても再生する。夏になると活発に動き回り、虫や蜘蛛などを捕食する。
【科学的見解】
蜥蜴は、トカゲ科に属する爬虫類で、体が鱗で覆われ、長い尾と爪のある四肢を持つところが特徴である。日本には、全国的に広く分布するニホントカゲが生息しているが、近年分類学的研究が進み、近畿以西の地域に生息する種がニホントカゲとなり、近畿以東から北海道までの主に東日本の地域に生息している種はヒガシニホントカゲとして種が分かれることになった。それらは、山地から低地の民家・田畑・河川周辺の草むらや岩場に生息し、よく日光浴をしている姿を目撃する。産卵期は五月から七月であり、十個程度の卵を産卵する。生まれた幼体は、青紫色の金属光沢をもつ美しい尾を有するが、基本的に成体になるとその美しさは失われていき、黒筋の入った褐色の体色となる。肉食性であり、昆虫類やクモ類を主食としている。天敵に襲われると尻尾を自切して天敵の注意をそらし、そのすきに逃げる習性がある。自切後、尻尾は二ヶ月程度で再生する。それら二種の他に、伊豆諸島周辺にオカダトカゲ、南西諸島にバーバートカゲ、オキナワトカゲ、オオシマトカゲ、イシガキトカゲ、クチノシマトカゲ、アオスジトカゲ、キシノウエトカゲ等が存在する。日本最大のトカゲ類は、八重山諸島や宮古諸島に分布するキシノウエトカゲであり、最大全長は四十センチメートルにもなる。また、トカゲ類に似た種としては、北海道から九州屋久島までの広範囲に分布しているニホンカナヘビが知られており、トカゲ類の皮膚表面には光沢があるのに対して、ニホンカナヘビの表面には光沢がなく、カサカサした鱗を持つところが特徴である。本種は、ニホントカゲやヒガシニホントカゲと同じような環境に生息しているため混同されることがあるが、皮膚表面の光沢が見分けるポイントである。(藤吉正明記)
【例句】
我を見て舌を出したる大蜥蜴
高浜虚子「七百五十句」
蜥蜴交るくるりくるりと音もなく
加藤楸邨「起伏」蜥蜴
やはらかく蜥蜴くはへて猫歩む
長谷川櫂「天球」
落し角(おとしづの)晩春
【子季語】
鹿の角落つ、忘れ角
【解説】
春から初夏にかけて、生え変わるために鹿は角を落とす。新しい角は袋角と呼ばれ、柔らかい皮膚で覆われている。鹿の角は生え変わるたびにその枝が多くなる。
【科学的見解】
シカ(ニホンジカ)は、ウシ目(偶蹄目)シカ科の哺乳類で、日本に生息する種は北海道のエゾジカから沖縄のケラマジカまで六亜種に分類されている。
これらのシカは、雄のみ角を持ち、毎年春に角を落とした後、新しい角と入れ替わる。シカの角は、二歳から生えはじめ、二歳の角は枝分かれをせず一本となる。三歳の角は、基部から枝分かれした二本の形になり、その後は四歳で枝分かれ三本、最終的には五歳以上で枝分かれ四本となる。そのため、角の形により雄の年齢が推定できる。基本的にその後枝分かれはしないが、稀に五本の枝分かれした個体が表れる場合がある。(藤吉正明記)
【例句】
角落とす鹿の狂ひや恋のごとし
樗良「題林集」
角落す鹿や嵯峨野の草の雨
紫暁「そねのまつ」
角落ちてはづかしげなり山の鹿
一茶「八番日記」
角落ちてあちら向いたる男鹿かな
正岡子規「寒山落木」
角落ちし気の衰へや鹿の顔
石井露月「露月句集」
さを鹿はからんと角を落しけん
長谷川櫂「虚空」


