蝌蚪(かと、くわと) 晩春
【子季語】
お玉杓子、蛙の子、蛙子、蛙生る、蝌蚪の紐、数珠子、蝌蚪の水
【関連季語】
蛙
【解説】
蛙の子である。ちょろちょろと泳ぎまわる姿が愛らしく、次第に手足が生え尾がとれてゆく。形が杓子に似ていることからこの名がある。
【来歴】
『俳諧初学抄』(寛永18年、1641年)に所出。
【科学的見解】
カエル類の幼生であるオタマジャクシは、水中生活に適応するために尾を発達させ、丸いからだと長い尾を有した柄杓状のシンプルな形をしている。幼生の出現時期は、種によって若干異なる。本州から九州までの温帯地域において、二月頃の早春に産卵するカエル類としてはニホンアカガエルやヤマアカガエルが挙げられ、それらは卵数千個程の卵塊を池や水田等の止水域に産み付け、三月頃には幼生が出現する。その後、紐状の卵塊を産み付けるヒキガエルの仲間や泡状の卵塊を形成するモリアオガエルやシュレーゲルアオガエル等が出現する。多くの種は、三月から五月にかけて産卵し、四月から六月にかけて幼生が観察される。沖縄等の亜熱帯地域のカエル類は、幼生の出現時期がさらに早く、冬季にも繁殖活動を行う種も多く存在する。多くのカエル類の幼生は黄土色から茶色の色合いをしているが、ヒキガエルの仲間の幼生は黒色の場合が多い。幼生は、成長していくと後あしが形成され、その後前あしが出現し、さらに尾がなくなることで成体へと変態が進んでいく。鰓呼吸であった幼生は、成体に変化すると皮膚呼吸も一部行うものの基本的には肺呼吸に変化する。(藤吉正明記)
【例句】
蛙子や何やら知れぬ水の草
蝶夢「発句題叢」
蛙子の蛙にならぬ水もなし
樗堂「発句題叢」
かたまりて蛙子くもる沢辺かな
未鳳「新類題発句集」
蛙子の牛に嗅るゝ家陰かな
葛三「新五百題」
この池の生々流転蝌蚪の紐
高浜虚子「七百五十句」
川底に蝌蚪の大国ありにけり
村上鬼城「定本鬼城句集」
富士高くおたまじやくしに足生えぬ
原石鼎「原石鼎全句集」
松風に蝌蚪生れたる山田かな
芝不器男「不器男全句集」
尾を振つて流され行くや蝌蚪一つ
星野立子「立子句集」
お玉杓子玉の命の一つづつ
長谷川櫂「初雁」
