百千鳥(ももちどり)三春
【関連季語】
囀
【解説】
春、いろいろな鳥がひとところに来て囀っているさまをいう。恋の相手を求めて鳴き交わすさまは、春の躍動そのものである。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
我が門の榎の実もり食む百千鳥千鳥は来れど君ぞ来まさむ 作者不詳 『万葉集』
ももちどりさへづる春は物ことにあらたまれども我ぞふり行く よみ人知らず『古今集』
【実証的見解】
百千鳥は、春の呼子鳥、秋の稲負鳥と並ぶ古今伝授三鳥のひとつ。古今伝授とは、古今和歌集の中の難しい語句の解釈を特定の人に伝授すること。百千鳥は、一説には鶯とされるが、「百千」の表記から、多くの鳥、さまざまな鳥と解釈したほうが自然である。
【例句】
つく杖のしちくにあゆめもも千鳥
鬼貫「俳諧七車」
河上は柳かうめか百千鳥
其角「五元集」
入り乱れ入り乱れつつ百千鳥
正岡子規「寒山落木」
百千鳥杣も知らざる径なり
佐藤紅緑「花紅柳緑」
親王の墓ある山の百千鳥
松本たかし「石魂」
百千鳥雌蕊雄蕊を囃すなり
飯田龍太「遅速」
礎に空映りをり百千鳥
高田正子「花実」