白魚(しらうお、しらうを) 初春
【子季語】
しらお、しろお、王余魚、銀魚、白魚網、白魚舟、白魚汲む、白魚火
【解説】
春の訪れを告げる小魚。生のうちは半透明だが、蒸したり煮たりすると真っ白になるので白魚という。近海魚で、春先に産卵のため川へ上がるところをとらえる。おどり食いにする素魚(しろうお)は、ハゼ科の別種。
【来歴】
『毛吹草』(正保2年、1645年)に所出。
【文学での言及】
月も朧に白魚の篝も霞む春の宵 河竹黙阿弥の歌舞伎「三人吉三郭初買」
【実証的見解】
白魚は、シラウオ科の魚の総称で、北海道から九州の沿岸域、河口付近、汽水域に棲息する。大きさは十センチ前後になるが雌のほうがやや大きい。二月から五月にかけて川に上り産卵し、産卵後は死んでしまう。
【例句】
白魚やさながら動く水の色
来山「きさらぎ」
白魚や目までしら魚目は黒魚
鬼貫「大悟物狂」
藻にすだく白魚や取らば消えぬべき
芭蕉「東日記」
曙や白魚白きこと一寸
芭蕉「野ざらし紀行」
白魚や黒き目を明ク法(のり)の網
芭蕉「韻塞」
白魚をふるひ寄せたる四つ手かな
其角「続猿蓑」
美しや春は白魚かいわり菜
白雄「白雄句集」
しらうをに有明月のうるみかな
大江丸「俳懺悔」
白魚の小さき顔をもてりけり
原石鼎「花影」
目にみえぬ炎にかざす白魚かな
長谷川櫂「初雁」