【子季語】
月冴ゆ、月氷る
【解説】
四季を通しての月ではあるが、冬の月といえば寒さによる心理的な要因もあってか荒涼とした寂寥感が伴う。雲が吹き払らわれた空のすさまじいまでの月の光には誰しもが心をゆすられる思いがあろう。
【例句】
静かなるかしの木はらや冬の月
蕪村「蕪村句集」
比木戸や鎖のさゝれて冬の月
其角「五元集」
背高き法師にあひぬ冬の月
梅室「梅室家集」
屋根の上に火事見る人や冬の月
正岡子規「子規句集」
【子季語】
節替り
【解説】
本来は季節の変り目をいうが、今は立春の前日のみをいう。二月三日頃である。この日は、年神が入れ替わる節であり、入れ替わりの隙をついて鬼が入り込もうとするので豆をまいて鬼を追い払う。各地の神社仏閣では追儺の鬼踊りや鬼を追う豆まきなどが行われ、多くの参詣人でにぎわう。冬の最後の日であり、春を迎える行事でもある。
【例句】
舟うるや声もたからか節分の夜
言水「誘心集」
節分やよい巫子誉むる神楽堂
召波「春泥発句句集」
節分や肩すぼめゆく行脚僧
幸田露伴「露伴全集」
節分やざくざくとふむ夜の雪
原石鼎「全句集」
節分の夜の瞳にたかし嶺の星
原石鼎「全句集」
節分や豆腐を買へる厨口
原石鼎「全句集」
【子季語】
氷る、凍ゆ、凍む
【解説】
寒気のためものが凍りつくこと。河や湖ときには室内の雑巾や花なども凍ってしまう。
【例句】
油凍りともし火細き寝覚めかな
芭蕉「書簡」
艪の声波ヲうつて腸氷ル夜やなみだ
芭蕉「武蔵曲」
うらの戸や腹へひゞきて凍割るる
一茶「七番日記」
こほらねど水ひきとづる懐紙かな
守武「守武千句」
捨舟のうちそとこほる入江かな
凡兆「蕉門古人真蹟」
音やむはいてつくならむ夜の笹
立志「あやにしき」
凍つけば凍つきながら笹の風
秋之坊「白陀羅尼」
庭草のよごれしままに風の凍
白雄「白雄句集」
庭土や凍て藁しく冬の海
成美「いかにいかに」
ともし行く灯や凍らんと禰宜が袖
正岡子規「子規句集」
頬凍て子の帰り来る夕餉哉
正岡子規「子規句集」
氷る夜の文殊に燭をたてまつる
川端茅舎「川端茅舎句集」
流れたき形に水の凍りけり
高田正子「花実」
【子季語】
寒さ、寒気、寒威、寒冷、寒九
【解説】
体感で寒く感じること、と同時に感覚的に寒く感じることもいう。心理的に身がすくむような場合にも用いる。
【例句】
ごを焼て手拭あぶる寒さ哉
芭蕉「笈日記」
寒けれど二人寝る夜ぞ頼もしき
芭蕉「真蹟自画賛」
袖の色よごれて寒しこいねずみ
芭蕉「蕉翁句集」
人々をしぐれよ宿は寒くとも
芭蕉「蕉翁全伝」
塩鯛の歯ぐきも寒し魚の店
芭蕉「薦獅子集」
しかられて次の間へ出る寒さかな
支考「枯尾花」
うづくまる薬の下の寒さかな
丈草「枯尾花」
朝の日の裾にとゞかぬ寒さかな
千代女「千代女尼句集」
薪舟の関宿下る寒さかな
正岡子規「寒山落木」
鞍とれば寒き姿や馬の尻
河東碧梧堂桐「春夏秋冬」
さむきわが影とゆき逢ふ街の角
加藤楸邨「寒雷」
しんしんと寒さがたのし歩みゆく
星野立子「立子句集」
水のんで湖国の寒さひろがりぬ
森澄雄「浮鷗」
藍甕の藍をうかがふ寒さかな
長谷川櫂「松島」