【子季語】
青蜥蜴、瑠璃蜥蜴、縞蜥蜴
【解説】
トカゲ亜目に属する爬虫類の総称。体長は大きなもので三十センチにもなるが、よく見かけるのは十センチ前後。肌はぬれて光沢があり、青や緑の縞模様がある。尾は切れやすく、切れても再生する。夏になると活発に動き回り、虫や蜘蛛などを捕食する。
【例句】
我を見て舌を出したる大蜥蜴
高浜虚子「七百五十句」
蜥蜴交るくるりくるりと音もなく
加藤楸邨「起伏」蜥蜴
やはらかく蜥蜴くはへて猫歩む
長谷川櫂「天球」
【子季語】
鹿の角落つ、忘れ角
【解説】
春から初夏にかけて、生え変わるために鹿は角を落とす。新しい角は袋角と呼ばれ、柔らかい皮膚で覆われている。鹿の角は生え変わるたびにその枝が多くなる。
【科学的見解】
シカ(ニホンジカ)は、ウシ目(偶蹄目)シカ科の哺乳類で、日本に生息する種は北海道のエゾジカから沖縄のケラマジカまで六亜種に分類されている。
これらのシカは、雄のみ角を持ち、毎年春に角を落とした後、新しい角と入れ替わる。シカの角は、二歳から生えはじめ、二歳の角は枝分かれをせず一本となる。三歳の角は、基部から枝分かれした二本の形になり、その後は四歳で枝分かれ三本、最終的には五歳以上で枝分かれ四本となる。そのため、角の形により雄の年齢が推定できる。基本的にその後枝分かれはしないが、稀に五本の枝分かれした個体が表れる場合がある。(藤吉正明記)
【例句】
角落とす鹿の狂ひや恋のごとし
樗良「題林集」
角落す鹿や嵯峨野の草の雨
紫暁「そねのまつ」
角落ちてはづかしげなり山の鹿
一茶「八番日記」
角落ちてあちら向いたる男鹿かな
正岡子規「寒山落木」
角落ちし気の衰へや鹿の顔
石井露月「露月句集」
さを鹿はからんと角を落しけん
長谷川櫂「虚空」
【解説】
雀くらいの小鳥で全国に分布し、春から夏にかけてツツピー、ツツピーと高く鳴く。黒い頭部、緑黄の背、白い腹をしている。山地に棲むが、ときには市街地にも飛来してくる。
【科学的見解】
シジュウカラは、シジュウカラ科の鳥類で、全国的に留鳥として生息しており、最も身近なカラ類である。近年の研究では、鳴き声をまとまりで認識する言語能力があることが科学的に証明され、話題となった野鳥でもある。例えば、「ツツピー」は警戒を促す鳴き声、「ジジジジ」は仲間を集める鳴き声等が知られている。産卵期は、四月から七月で、七個から十個程度産卵する。営巣は樹洞などを利用するため、巣箱を設置すると繁殖に利用する。(藤吉正明記)
【例句】
老の名のありとも知らで四十雀
芭蕉「許六宛書簡」
四十雀つれわたりつつなきにけり
原石鼎「原石鼎全句集」
【子季語】
怪鷹、蚊吸鳥
【解説】
ヨタカ科。鳩ほどの大きさの鳥で、褐色や黒、白のまだら模様である。北海道から四国の山地や草原に棲んでいる。夜行性で夕方から活動し、おもに虫類を喰べる。夏の夜、キョッキョッという鳴き声をたてる。
【科学的見解】
ヨタカは、ヨタカ科の鳥類で、九州以北の低山から山地の林に夏鳥として東南アジアから渡来する。夜行性のため、昼間は木の横枝にとまって休息する。フクロウと同様に羽毛が柔らかく、羽音は立てない。林や草原において、地面を浅く掘って地上で営巣する。産卵期は五月から八月で、二個程産卵する。(藤吉正明記)
三冬
【子季語】
寒の鵙、冬鵙
【解説】
秋、さえざえと鳴いていた鵙も冬には、枯枝にとまり静かに獲物をねらう。宮本武蔵筆による『枯木鳴鵙図』のごとく、梢に凛と胸を張っている姿は印象的である。
【子季語】
うしかはず
【解説】
北米原産。体長十一から十八センチほど。全国の水草の茂る流れの緩やかな河川、池沼、湖、湿地などに生息。牛のような、非常に大きな声で鳴く。それが和名の由来。食用にもなり、食用蛙ともよばれる。
【例句】
飛騨の夜を大きくしたる牛蛙
森澄雄「鯉素」
よき声に水ふるはせて牛蛙
長谷川櫂「初雁」