【子季語】
実紫/紫式部の実/小式部/白式部
【解説】
クマツヅラ科の落葉低木。秋、紫や白のあざやかな球形の実を結ぶ。山地に自生、観賞用にも栽培される。名は『源氏物語』の作者、紫式部に由来する。
【科学的見解】
ムラサキシキブは、シソ科(旧クマツヅラ科)ムラサキシキブ属の落葉低木で、北海道南部から九州までの平地から山地にかけて広く分布している。本種の花は淡い紅紫色で、果実は紫色の球形をしている。本種もメジロ等の小鳥によって種子が散布されている。「ムラサキシキブ」という名で園芸店等で販売されている苗木の多くは、紫色の実付きが良いコムラサキという種である。その他、近縁種としては、葉が大きいオオムラサキシキブや葉の裏面に星状毛が生えるオオシマムラサキ等が知られている。(藤吉正明記)
【例句】
いとほしや人にあらねど小紫
森澄雄「白小」
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黍(きび) 仲秋
【子季語】
黍の穂/もちきび/黍刈る/黍引く/黍畑/黍団子
【解説】
イネ科の一年生作物。秋に収穫される五穀の一つ。古くは、米の替わりとして食された。江戸期に入っても、黍団子などにして庶民に食されたが、現在では、栽培量は少ない。
【例句】
いやな風穂のない黍のによきによきと
一茶「七番日記」
黍の中嚔飛ばして誰か来る
道彦「蔦本集」
薯蕷(ながいも) 三秋
【子季語】
長薯/駱駝薯
【解説】
ヤマノイモ科の蔓性多年草。多くは田畑に栽培。根は二メートルにも達する。秋に収穫し、とろろや煮物にして食する。「自然薯」に比しては食味に乏しい。葉腋には「むかご」を生ずる。
【科学的見解】
薯蕷(ナガイモ)は、日本在来のヤマノイモに似ているが、中国から持ち込まれた外来種である。一般的には、野菜として畑で栽培されているが、逸出したものが一部野生化している。種子繁殖(有性生殖)に加え、むかご(無性生殖)でも繁殖を行っている。その他の栽培変種としては、イチョウイモ、ツクネイモ、ヤマトイモなどがある。(藤吉正明記)
【例句】
薯蕷掘つて入日に土の香寒し
高田蝶衣「青垣山」
棗の実(なつめのみ) 初秋

【子季語】
棗/青棗
【解説】
秋、棗は熟し暗赤色の実となる。砂糖漬けなどにして食する。酸味があり、強壮・解熱などの薬効がある。
【科学的見解】
ナツメは、ヨーロッパ南部及びアジア西南部原産のクロウメモドキ科の落葉樹である。ナツメは、世界において食用果樹として昔から栽培されてきた。特に中国では栽培が盛んであるが、日本ではあまり栽培及び食利用ともに行われていない。名の由来は、芽吹く時期が遅く、初夏になって芽を出すことから夏芽という名がついたとされる。(藤吉正明記)
なる時もなつめにめづなもぎとるな
立圃「空礫」
よもすがら鼠のかつぐ棗かな
暁台「暁台句集」
鼠ゐて棗を落す月夜かな
村上鬼城「定本鬼城句集」
棗盛る古き藍絵のよき小鉢
杉田久女「杉田久女句集」
山葡萄(やまぶどう/やまぶだう) 仲秋
クリスマスローズ 仲冬
【解説】
ヨーロッパ原産の鑑賞用の常緑多年草。地下にある茎から葉を突き出す。冬のはじめに花茎を伸ばし直径三~六センチくらいの花を開く。色は紫系が主。イギリスではクリスマス用として温室で作る。
【科学的見解】
クリスマスローズは、キンポウゲ科の常緑多年草である。観賞用として鉢植えで販売されている。耐寒性があるため、庭先などでも栽培できる。野外栽培では、一月から三月頃に開花する。クリスマス時期の年末に開花させるためには、温室内での日長処理が必要になる。(藤吉正明記)
冬枯(ふゆがれ) 三冬
【子季語】
枯る/冬枯道
【解説】
冬の草木が枯れ果てた荒涼とした景を言う。草や樹、一木一草の枯れのこともいうが、野山一面枯れ色となった景のことでもある。
【例句】
冬枯や雀のあるく樋の中
太祇「太祇句選」
冬枯れや寺門幽かに人を呼ぶ
暁台「暮雨巷句集」
冬枯の木の間のぞかん売屋敷
去来「いつを昔」
冬枯れて窓はあかるき雨夜かな
一茶「寛政句帖」
冬枯れにめらめら消ゆるわら火かな
一茶「文化句帳」
かれがれや葛の下なる木の葉石
蘭更「三傑集」
冬枯や平等院の庭の面
鬼貫「大悟物狂」
草山の綺麗に枯れてしまひけり
正岡子規「子規句集」
冬枯や泥によごれし馬が来る
佐藤紅緑「花紅柳緑」
枯れ果てて誰か火を焚く子の墓域
飯田龍太「童眸」
枯れはてて濯ぐうしろは山ばかり
飯田龍太「春の道」
麻(あさ) 晩夏
【子季語】
大麻/麻畑/麻の葉/麻の花
【解説】
“アサ科の一年草、大麻の別称。夏には二メートル程の茎に、深い切れ込みのある葉をつけ繁茂する。
晩夏に刈り取り、茎の皮は蒸して繊維を取り乾燥させて麻糸にする。皮を剥いだ後の茎は苧殻といい、盆の迎え火、送り火に使う。”
【科学的見解】
アサは、中央アジア原産の植物であり、戦前まで日本でも繊維利用目的で栽培されていた。アサは、繊維だけでなく、種子も食用にできる有用植物であるが、現在法律により許可なく栽培することはできない。広義の意味でのアサは、繊維利用できる植物全般に使われ、亜麻(アマ)、苧麻(カラムシ)、マニラ麻、黄麻(ジュート)などアサ科とは異なる植物が多く含まれている。(藤吉正明記)
【例句】
ゆり出す緑の波や麻の風
惟然「菊の香」
麻の香のくるも涼しや寺の庭
北枝「柞原」
しののめや露の近江の麻畠
蕪村「蕪村句集」
夕暮やかならず麻の一嵐
正岡子規「子規句集」
月見草(つきみそう/つきみさう) 晩夏
【解説】
アカバナ科の二年草、原産地はメキシコ。初夏になると、白い四弁の大きな花を夕刻に開き翌朝にはしぼんで赤黄色となる。
【科学的見解】
ツキミソウは、別名としてツキミグサと呼ばれている。メキシコ原産の本種は、アカバナ科の二年草であり、江戸末期にマツヨイグサ類とともに導入された。花は、白色をしており、黄色の花をつけるマツヨイグサ類とは容易に区別できる。現在、マツヨイグサ類は逸出して田畑や市街地等でよく見かけるが、本種は日本の野生環境に馴染めなかったのか、逸出個体はほとんど見かけない。(藤吉正明記)
【例句】
月見草別れてのちの山霧は
臼田亜浪「定本亜浪句集」
月見草咲く砂明り聖徒にや
河東碧梧桐「碧梧桐句集」
北斗露のごとし咲きすむ月見草
渡辺水巴「水巴句集」


