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季語と歳時記

きごさい歳時記

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鰯雲(いわしぐも)三秋

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【子季語】
鱗雲
【関連季語】
鯖雲
【解説】
鰯の群れのように空に広がる雲。魚の鱗にも似ていることから、鱗雲ともいう。この雲が見られると鰯の群れがやってくるともいう。
【来歴】
『改正月令博物筌』(文化5年、1808年)に所出。
【実証的見解】
鰯雲は巻積雲のこと。雲自体は氷の細かな結晶で上層雲に分類され、高度五キロメートルから十五キロメートル程度に発生する。温暖前線や熱帯低気圧の接近時に現れるため、天候の悪化の前兆といわれる。台風や移動性低気圧が近づく秋によく見られる。秋の象徴的な雲である。
【例句】
鰯雲鯛も蚫も籠りけり
北枝「薦獅子集」

鰯雲立塞ぎけんふねの道
嘯山「葎亭句集」

鰯雲人に告ぐべきことならず
加藤楸邨「寒雷」

生涯にいくたびか全天鰯雲
森澄雄「天日」

鰯雲ひろがりひろがり創痛む
石田波郷「惜命」

鰯雲涙あふれてまた乾く
長谷川櫂「虚空」

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秋高し(あきたかし)三秋

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akitakasi【子季語】
秋高、天高し、空高し
【関連季語】
秋晴
【解説】
秋になると、大気が澄むので空が高くなったような感じがする。これが「秋高し」だが、「天高し」の方が一般的。
【来歴】
『俳諧寄垣諸抄大成』(元禄8年、1695年)に所出。
【実証的見解】
秋晴参照
【例句】
痩馬のあはれ機嫌や秋高し
村上鬼城「定本鬼城句集」

天高し釈迦の生れし国に来し
星野立子「春雷」

雲飛んで伊豆山の秋高きかな
長谷川櫂「富士」

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秋の空(あきのそら)三秋

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【子季語】
秋空、秋天、旻天、秋旻
【関連季語】
秋晴、秋高し
【解説】
澄みきった空をいう。秋は雨に見舞われることも多いが、その後、大陸からの移動性高気圧おおわれてからりと晴れあがり、爽やかな空となる。
【来歴】
『世話盡』(明暦2年、1656年)に所出。
【文学での言及】
おほかたの秋の空だに侘しきに物思ひそふる君にもあるかな 右近『後撰集』
よもすがらながめてだにも慰まんあけて見るべき秋のそらかは 源兼長『後拾遺集』
【実証的見解】
秋晴参照
【例句】
によつぽりと秋の空なる不尽の山
鬼貫「大悟物狂」

秋の空尾の上の杉に離れたり
其角「炭俵」

樫の木の色もさむるや秋の空
去来「泊船集」

上行くと下くる雲や秋の天
凡兆「猿蓑」

秋の空きのふや鶴を放ちたる
蕪村「蕪村遺稿」

秋の空露をためたる青さかな
正岡子規「子規全集」

秋の空浅黄に澄めり杉に斧
夏目漱石「漱石全集」

雲一つ秋空深く上りゆく
松本たかし「石魂」

高山に大声放つ秋の空
大須賀乙字「乙字俳句集」

秋空へ大きな硝子窓一つ
星野立子「続立子句集第二」

去るものは去りまた充ちて秋の空
飯田龍太「今昔」

研ぎあげて包丁黒し秋の空
長谷川櫂「古志」

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秋の声(あきのこえ、あきのこゑ)三秋

季語と歳時記

【子季語】
秋声、秋の音
【解説】
物音がさやかに聞こえること。風やせせらぎなど自然の音ともかぎらず、人のたてる物音ともかぎらない。具体的な音ばかりでなく、心の中に響いて来る秋の気配もまた、秋の声である。
【来歴】
『改正月令博物筌』(文化5年、1808年)に所出。
【文学での言及】
水茎の中にのこれる滝のおといとしも寒き秋のこゑかな 大中臣能宣『新古今集』
五十鈴川そらやまだきに秋のこゑしたつ岩ねの松の夕風 大中臣明親『新古今集』
荻の葉にかはりし風の秋の声やがて野分の露くだくなり 藤原定家『玉葉集』
【例句】
帛を裂く琵琶の流れや秋の声
蕪村「蕪村文集」

擲てば瓦もかなし秋のこゑ
蓼太「蓼太句集」

さゞ浪やあやしき迄に秋の声
嘯山「葎亭句集」

秋声や石ころ二つ寄るところ
村上鬼城「鬼城句集」

癒えたりし胸の奥より秋の声
長谷川櫂「蓬莱」

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秋の色(あきのいろ)三秋

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【子季語】
秋色、秋光、秋景色、秋望む
【解説】
秋らしい色のこと。具体的には、黄金色の稲田や紅葉に染まる山の色をさす。
【来歴】
『増補花火草』(延宝6年、1678年)に所出。
【文学での言及】
夕づく日むかひの岡のうす紅葉まだきさびしき秋の色かな 藤原定家『玉葉集』
山里の里のしるべの薄紅葉よそにもをしき秋の色かな 後鳥羽院『玉葉集』
秋の色は籬にうとくなりゆけど手枕なるるねやの月影 式子内親王『新古今集』
【例句】
箔のない釈迦に深しや秋の色
鬼貫「犬居士」

秋の色糠味噌壺もなかりけり
芭蕉「草庵集」

裏門に秋の色あり山畠
支考「浮世の北」

なみ松の間々や秋の色 
荷兮「曠野後集」

秋の色野中の杭のによひとたつ
暁台「暮雨巷句集」

一山や秋色々の竹の色
夏目漱石「漱石全句集」

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秋晴(あきばれ)三秋

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【子季語】
秋の晴、秋晴る
【関連季語】
秋日和
【解説】
晴れわたる秋の天気のこと。秋日和と同じことであるが、秋晴は秋日和より言葉の響きがやや強い。
【実証的見解】
秋は、大陸からの移動性高気圧と低気圧が交互に日本に訪れる。そのため、三日ほどの周期で天気が変わる。低気圧がもたらす雨は、大気中の塵を洗い流すように落すので、入れ替わりにやって来る高気圧のもとでは、澄み渡った爽やかな天気となる。
【例句】
秋晴れて凌雲閣の人小さし
正岡子規「子規句集」

ほのかなる空の匂ひや秋の晴
高浜虚子 「七百五十句」

秋晴や遠く遊べる宮の鳩
巌谷小波「さゝら波」

空に散る焚火の灰や秋の晴
岡本松浜「新春夏秋冬」

秋晴の茅舎訪へばよろこべり
星野立子「立子句集」

秋晴や佐渡一国は波の上
長谷川櫂「初雁」

秋晴れて動くもの無きこの世かな
高田正子「玩具」

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秋の日(あきのひ)三秋

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【子季語】
秋日、秋の朝日、秋の夕日、秋日射、秋日影、秋の入日
【解説】
秋の日の光であり、秋の一日でもある。秋の太陽は残暑をもたらすが、しだいに爽やかになり、晩秋には目に見えて日差しも衰える。秋の一日は、秋分を過ぎるとしだいに日が短くなり、冬が近づくころには、釣瓶落としいわれるように、一気に暮れてしまう。
【来歴】
『改正月令博物筌』(文化5年、1808年)に所出。
【文学での言及】
時雨つつ袖だにほさぬ秋の日にさこそ三室の山は染むらめ 藤原定家『新勅撰集』
霧薄き秋の日影の山の端にほのぼの見ゆるかりの一つら 従三位為信「風雅集』
残りける秋の日数をかぞへつつ霜の夜な夜なうつ衣かな 亀山院『続千載集』
【例句】
汐くみて秋の日光る桶のそこ 
蝶夢「秋好む紀行」

秋の日や山は狐の娵入り雨
一茶「九番日記」

秋の日のかりそめながらみだれけり
去来「曠野後集」

秋の日やちらちら動く水の上
荷兮「曠野後集」

沓掛や秋日にのびる馬の顔
室生犀星「遠野集」

香しく天地を干す秋日かな
長谷川櫂「松島」

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羅(うすもの) 晩夏

季語と歳時記

usumono【子季語】
軽羅、絽、紗、透綾、薄衣、綾羅紗、
【解説】
絽、上布、など見た目にも涼しげな盛夏用の着物。張がありよく風を通し実際に着てみても涼しい。
【例句】
羅に遮る蓮のにほひ哉
蕪村「蕪村句集」

羅に衣通る月の肌かな
杉田久女「杉田久女句集」

羅をゆるやかに着て崩れざる
松本たかし「松本たかし句集」

翩翻と羅を解く月の前
日野草城「花氷」

羅やところどころの糸太く
長谷川櫂「虚空」

羅や身じろぐときの水の紋
高田正子「玩具」

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旱(ひでり) 晩夏

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【子季語】
旱魃、旱害、旱空、旱天、夏旱、大旱、旱年、旱畑、旱草、旱雲
【解説】
太平洋高気圧に覆われて、連日雨が降らずに日が照りつけることをいう。旱魃とも言いい、地面は渇ききって草木は枯れてしまう。農林災害はもちろん、人々の飲料水にも深刻な打撃を与える。           
【例句】
畠にしてほし瓜となす日でり哉  
日能「鷹筑波」

海賊の村に水汲む旱かな   
正岡子規「子規全集」

大海のうしほはあれど旱かな
高浜虚子「五百句」

しらじらと明けて影濃し旱雲
前田普羅「普羅句集」

大旱天智天皇の「秋の田も」
川端茅舎「川端茅舎句集」

大旱の空に鴉の啼きにけり
長谷川零余子「零余子句集」

畳目に箒のひびく旱かな
長谷川櫂「果実」

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片蔭(かたかげ) 晩夏

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【子季語】
片かげり、夏陰、日陰
【解説】
午後の日差しが建物や塀などに影をつくる。歩くにも、少しでも日陰を選びたい夏。「緑陰」や「木下闇」とは、区別して用いたい季語。古くから長塀の片蔭などは存在していたのであるが、都市の構造物の変遷もあり、大正以降、よく使われだした季語でもある。
【例句】
見送るも夏は日陰や一里塚
李下「別座敷」

井戸水を浴びて涼しき日陰哉
青木月斗「月斗句集」

片蔭にぽつゝ宵宮参りかな
青木月斗「月斗句集」

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