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10/19 (土) ズームできごさい+ 「麗しき島を詠む」

きごさいBASE 投稿日:2024年7月29日 作成者: dvx223272024年11月12日

さまざまなジャンルから講師をお迎えして季節や文化に関わるお話をお聞きする「きごさい+」
今回の講師は、名古屋大学大学院で戦後の日台俳壇についての研究をされている李哲宇さんです。
どうぞぜひご参加ください。
講演の後、句会もあります。(選者:李 哲宇、飛岡光枝、長谷川櫂)

日 時 : 2024年10月19日(土) 13:30~16:00
演 題 : 麗しき島を詠む――「台北俳句会」と台湾の季語について
講 師 : 李 哲宇 (リ テツウ)

プロフィール:
1996年台湾台北市生まれ、新北市出身。2018年台湾輔仁大学日本語学科を卒業。2021年台湾輔仁大学日本語学科修士課程で修士号を取得。現在、名古屋大学人文学研究科日本文化学講座博士後期課程在学中。戦後の日台俳壇の交流について博士論文に取り組んでいる。「台北俳句会」会員、「春燈」会員、「耕・KŌ」会員、「台湾川柳会」会員、「俳人協会」会員。
俳句のほか、「私から見た金沢、日本とは」(留学生エッセイコンテスト、金沢香林坊ロータリークラブ主催、2018年、最優秀賞)、「季節の美」(『春燈』7月号、春燈俳句会、2023年、p. 39)等のエッセイもある。現在は都道府県を回りつつ、記録としての俳句及び紀行文を残すことを目指している。

講師からのひと言
中国語、台湾語などの発音でルビを振るものや春夏秋冬を使わない分類法で表現する。もしこのような季語があれば、かなり想像しがたいであろう。しかし、日本に近いようで遠い南国の台湾では、このような「台湾季語」が存在する。加えて、独特な匂いがする「臭豆腐」、台湾における白色テロの発端である「二二八」、魚だがサバではない「サバヒイ(虱目魚)」などの解説文を読まないと分からない項目も見受けられる。様々な独自性を持つ「台湾季語」は、どうして創り出されたか、どう詠まれたかなどの問題は、日本人にとっても、台湾人にとっても難しく、複雑に思われるであろう。これもまた台湾季語と台湾の俳句の魅力だと、私は思う。

2024年10月19日(土) 13:30~16:00  (13:15~ Zoom入室開始)
13:30~14:45  講演
14:50~15:20  句会(選句発表)
15:20~16:00  飛岡光枝(きごさい編集委員)との対談、質疑応答

ズームを使ったオンライン講演会です。10/10(木)までに参加申し込みをして、10/15頃メールで配信するズーム入室URLなどの案内をご確認いただかないと、当日視聴できません。よろしくお願いいたします。

7月 きごさい+報告 「硯がひらく世界」 

きごさいBASE 投稿日:2024年7月14日 作成者: dvx223272024年7月17日

7月6日、第35回きごさい+がズームで開催されました。

「硯がひらく世界」       甲斐雨端硯本舗13代目硯匠 雨宮弥太郎

〇雨畑硯の歴史
雨畑硯は山梨県南部早川町雨畑にて産出される石で当家初代雨宮孫右衛門が元禄3年(1690年)身延山参詣の途上黒一色の流石を広い作硯した事に始まると伝えられています。(日蓮上人高弟開祖の伝承もあり。)雨畑は山深い所であるため当時富士川舟運で栄えた鰍沢に多くの職人が集まり硯づくりが盛んになりました。そして、天明4年四代要蔵が将軍家に硯を献上するなどして雨畑硯の名が全国に高まることとなりました。
(※雨畑硯は地場産業としての一般的な表記であり「雨端硯」は八代鈍斎が中村敬宇氏よりいただいた雨宮弥兵衛家の登録商標表記です。)

〇硯造形の流れ
日本は工芸王国です。しかし石の工芸はあまり注目されてきませんでした。硯の歴史を調べてみても 多くは硯箱の意匠の変遷に重きが置かれ硯についてはほとんど触れられていません。硯の意匠について 当家に残る八代鈍斎、十代英斎の作品などをみても中国硯の強い影響が見られます。日本独自の硯の意匠は十一代静軒から始まると言えるかもしれません。 静軒は文房四宝に造詣の深い犬飼木堂翁に教えをいただき東京美術学校で彫刻を また竹内栖鳳より図案を学び 自然の風物を硯に取り入れ芸術としての硯を確立しました。 その〝間〟を重視した造形は 柔らかい硯石の質感を十二分に生かした和様の意匠です。続く十二代弥兵衛・誠の作品は抽象表現主義の影響を受けた斬新なシンプルな造形となり 硯作品にも時代の美意識の変遷を見て取る事ができます。 続く私の作品ですが父の無駄なものを極力省いたシンプルな造形をベースに〝何でもない形でありながら品格の宿るかたち〟を目指して独自のスタイルを模索しているところです。

〇硯の用途とは
硯は墨をするための道具です。 しかし本当にそれだけのものでしょうか。 焼き物で作られていた古代の硯にはどう見ても実用第一に作られたものにはみえない〝円面硯〟〝多足硯〟〝動物硯〟などが見られます。 字を書くという事が特別であった時代の〝権力〟〝祈り〟への想いがあるように感じられます。 また中国に見られる文房飾り。実用以上に文人の理想の境地の表現です。ここでは硯は一番の主役でした。 知的に自分を高めるための存在だったのではないでしょうか。
私は 硯は〝墨を磨るうちに心を鎮め 自分の内面と向き合うための道具〟と捉えています。いわば〝精神の器〟として現代の造形としての可能性を感じています。
では、硯が硯として成立するためにはどんな条件が必要でしょうか。私は良石に平らな面さえあれば充分だと考えています。 そして そこさえ押さえておけば かなり自由度の高い造形が可能です。 さらに墨が溢れにくいように縁が生じ 磨った墨をためる窪みの出現など 現在のスタンダードな硯の形が完成しました。この硯の形の成立には今では当たり前のスティック状の〝墨〟の完成が必須でした。 この硯の形の完成は唐代のことと言われ現在でも〝唐型硯〟というスタイルで定着しています。

〇硯石について
雨畑の石は良質な粘板岩であり岩石が生成される際の圧力によって板状に生成されるはっきりとした石目をもった素材です。 その際に雲母、石英といった硬質な微粒子が均一に発生し、この〝鋒鋩〟と呼ばれる粒子が墨を磨る硯の生命です。 適度な硬度の石質であると長く使用していても最適な〝鋒鋩〟が保持される。これが何よりも大切な硯石の条件です。 しかし自然生成された素材ですので異物が混入していたり 傷が多い石が殆どです。雨畑には粘板岩状の山肌が沢山見られますが硯に適した良材は限られた層から産出される貴重なものです。
この原石を硯にするには まず上下面をタガネ→鑿→砥石を用いて水平とし板状に整えます。 切断機、砥石等を用いてさらに外形を整え、多様な刃先の鑿を用いて墨堂、墨池(陸、海)を掘り進めます。 次に砥石を用いて磨いていきます。 〝磨き〟といっても ただつるつるに磨き上げるのではなく何よりも最適な〝鋒鋩〟に整える事が大切です。 最終的に墨ぬりをへて墨堂墨池以外の硯まわりを拭き漆で炭の微粒子を定着させてブラシで拭き上げて艶を出して仕上げます。

〇私の作品制作について
作品制作においてはまず明確なイメージを持つ事が大事になります。そのイメージの形を頭の中で三次元で回転させて多方向からも形がイメージできるように練り上げます。 大切なのは頭の中で形が周りの空間ごと ひとつの風景として再現できるかという事です。 次にそのイメージが現実化できそうな原石を探します。この時に自分のイメージした形がそのまま実現できる大きさ、プロポーションの原石はほぼ無いのが現実です。なんとか形になりそうな素材を選びイメージと原石をすり合わせながら制作を進めていきます。 はじめから思い通りにいかない状態からイメージだけを頼りに制作を進めます。まるでアドリブを積み重ねるジャズの演奏のように その模索の時間こそが制作の喜びです。その不確定な制作の最中に当初思い描いていなかったようなものがまるで天の啓示のように湧き上がってくることもあります。この天からの啓示を引き寄せる力 柔軟に対応して最終的には自分の形にできるという自信のようなものが 今まで自分の培ってきた造形力(創造性)なのだと私は考えています。
しかし、工芸会の別の素材の作家との会話から創造の過程には別な形がある事も発見しました。その作家は制作当初に厳密な設計図を描きそれが完璧に実現出来る事が素晴らしい制作工程だと話していました。私と全く違う考えですが、その一枚の設計図には深い経験が反映されていると考えられます。私も日々の生活の中で路上の枯葉に新しい造形要素を発見するなど 目にする全てのものを硯造形に引き寄せて見てしまう習慣があります。
そういった観察の蓄積が作品イメージに結実していく。 日々の習慣と経験が創造力の源だという点では同じなのかもしれません。

〇これからの〝硯〟
硯の未来を考えるうえで こんな現実があります。 毎年 小学生50名ほどが伝統文化を学びにやって来るのですが殆どの子ども達が硯が墨を磨る道具である事を知らないのです。 現在の小学生の書道セットに入っている硯は樹脂制でほぼ墨汁をためる為だけに使われています。そのために実際に石の硯で墨を磨った経験のある子は僅かだろうとは思っていましたが そこまでとは驚きでした。そこで現在は実際に硯で墨を磨ってもらうワークショップを積極的に開催しています。墨を磨る時の感触、香などで気持ちが落ち着く時間を体験し、磨った墨で描いてもらうことで墨汁とは違った多彩な色合いを発見してもらいます。墨汁を使った書道の時間も入門として大切ですが 実際に石の硯で墨を磨る豊かさは心に残ってくれると信じています。 〝文化としての硯〟を今後とも伝承していきたいと思います。
硯を現代の造形として広める事も私の夢です。硯に向き合う事は禅の石庭に瞑想することと同義である事 いわば〝ZEN. STONE〟として海外にもアピール出来たらと思っています。硯の存在は地味で小さなものですが日本文化を支える大事な要素として広めていけるよう精進を重ねたいと思っています。

<句会報告> 講座の後、句会が開催されました。選者:雨宮弥太郎、西川遊歩、長谷川櫂
雨宮弥太郎 選
【特選】
硯より湧くこゑを聞く楸邨忌        西川遊歩
月涼し心はさらに墨磨れば         齋藤嘉子
悠久の時を削りて硯とす          上田雅子
滴りやみるみる目覚め大硯         西川遊歩
空掴む吾子の掌新樹光           丸茂秀子
【入選】
月一つ沈めて深き墨の海          三玉一郎
遠き日の墨磨る父や星祭          鈴木美江子
文鎮と硯の重み夏休み           奈良握
漂泊の硯の寓居月涼し           西川遊歩
魂の涼しと思ふ硯かな           きだりえこ
うち澄まし硯にうつす梅雨の月       足立心一
手のひらにあたたかくある硯かな      高橋慧
星涼し今宵夜空を硯かな          葛西美津子
遺されし硯一片夏の雲           飛岡光枝
墨磨れば香の運びくるはるか夏       越智淳子
墨書てふ虚実のあはひ沙羅の花       長谷川冬虹
青墨の涼一文字や夏座敷          金澤道子

西川遊歩 選
【特選】
月一つ沈めて深き墨の海          三玉一郎
涼しさの甲斐に硯の海ひとつ        イーブン美奈子
青山河研ぎ出したる硯かな         齋藤嘉子
一つ葉に目をやすめては硯彫る       長谷川櫂
山滴るその一滴を硯とす          齋藤嘉子
月涼し墨摩るほどに心澄み         木下洋子
【入選】
滴りの滴一滴と硯磨ぐ           葛西美津子
涼しさや硯の海をわたりゆき        イーブン美奈子
遠き日の墨磨る父や星祭          鈴木美江子
青梅雨の窓に籠りて硯彫る         葛西美津子
ならまちや墨の香のたつ麻のれん      きだりえこ
魂の涼しと思ふ硯かな           きだりえこ
滴りのただ一滴の硯かな          三玉一郎
迸る井戸のポンプに硯洗ふ         越智淳子
手のひらにあたたかくある硯かな      高橋慧
浮葉より硯の海へひと雫          きだりえこ
筆硯濯ぎてよりの夕涼み          きだりえこ
青墨の涼一文字や夏座敷          金澤道子
雄勝石戴く駅舎梅雨曇           足立心一
大いなる硯に山の滴りを          木下洋子

長谷川櫂 選
【特選】推敲例あり
硯より湧くこゑ聞かん楸邨忌        西川遊歩
青山河研ぎ出したる硯かな         齋藤嘉子
滴りやみるみる目覚め大硯         西川遊歩
【入選】
滴りの滴一滴と硯磨ぐ           葛西美津子
初盆やそのままにある硯箱         鈴木美江子
くろぐろと春一文字初硯          三玉一郎
翠巒に対すがごとく硯あり         齋藤嘉子
明易やしんと雨畑硯あり          飛岡光枝
一片の蓮の花びら硯かな          飛岡光枝
墨磨つて今日の一文字夏休み        飛岡光枝

5月 きごさい+報告 「韓国の四季と生活」

きごさいBASE 投稿日:2024年5月26日 作成者: dvx223272024年5月26日

5月12日、第34回きごさい+がズームで開催されました。

     韓国の四季と生活 ― ソウル俳句会の俳句から
                                                              ソウル俳句会顧問 山口禮子

1 はじめに
ソウル俳句会は「俳句を通しての草の根の日韓親善」を掲げ、初代代表、戸津真乎人が在韓の日韓の人々に呼びかけ1993年に発足。以来「師もなく派もない」句会として今年、31年目を迎えた。この間、年に1度の合同句集の発行、そして2000年からの日本の俳人を招請しての講演、句会を催してきた。稲畑汀子、金子兜太、有馬朗人、黒田杏子、坪内稔典、長谷川櫂、夏井いつき、星野椿、神野紗希、本井英、岸本尚毅、高田正子ほか、諸先生方の直接のご指導は、陸の孤島のソウル俳句会にとっては刺激的、かつ素晴らしい学びの経験となった。
また500回を迎えようとしている月2回の定例句会(勉強会と吟行句会)ではたくさんの句が詠まれてきた。そこには韓国ならではの風景、韓国ならではの感慨が詠まれている。ソウル俳句会版「韓国俳句歳時記」の目安はついているんではないかと思う。
昨年7月からは、ソウル大学で日本の古典文学を講ずる齊藤歩五代目主宰、石川桃瑪副主宰、ソウル本部、なにわ支部、東京支部の会員、合わせて80余名の新体制になったが、これからも韓国で、日本で、韓国の四季と生活を、ソウル俳句会ならではの句を大いに詠んで、充実した「韓国俳句歳時記」が編纂されることに大いに期待している。

2 ソウルの気候
ソウルは温帯性、大陸性気候に属し、四季がはっきりしている。夏は高温多湿で、冬は寒冷で乾燥し、春と秋はからっとした晴れの日が多い。寒暖の差が大きく気温の年較差、日較差が大きい。2022年で見ると降水量は年間1478mmだが、雨は7、8月に年間の55%に当たる817mm(東京は388mm 24%)と集中して降る。
ソウルの顕著な気候現象の例として黄砂と氷板(ピンパン)キルについて見てみたい。
a黄砂【春】
中国、モンゴルと地続きのため、そして春の乾燥気候のため、、数メートル先が見えないほどの黄砂に見舞われる。
黄砂にもなほ白光の夕日かな  延与紀舟
楼閣の黄砂を洗う雨優し  神野有楽
b氷板(ピンパン)キル【冬】
厳寒のソウルでは道が凍ることはしばしば。
ピンパンキル滑って転んで空青し  孫可楽(ソンカラク)
千鳥足行く手にキラリ氷板道(ピンパンキル)  中田悟空

3 花が彩る韓国の四季
日本と同じ温帯に属するソウルでは植生は似ているが、興味深いのは植物の持つ意味合い、イメージが異なっていることがあることだ。
a桜【春】
韓国では植民地時代に各地に植えられたが、1945年の独立後には「日本の残滓」として伐採運動が起こった。その後、1974年に朴正煕大統領が「もともと韓国に自生していた」と植林を勧めたこと、さらに「ソメイヨシノの原産地は済州島である」という風説が広まり、全国各地に盛んに植えられ、現在では国民的な花になった。
日本人が古来、桜に「あはれ」を見てきたのに対し、韓国の桜は春を謳歌する花として愛でられているようだ。
半島をバスは南へ初桜  文茶影(ムンチャカゲ)
花冷やけふ閉店の骨董屋  那須川結香
bアカシアの花【夏】
韓国各地の緑化をめざして1960、70年代に、成長の早い樹木として韓国各地にニセアカシアが植えられた。
アカシアの花眠たげに午後のお茶  田中穂積
山裾のアカシア白き白き雨  村松玄歩
c無窮花(ムグンファ) 木槿【秋】
「槿花一日の栄え」と日本では栄華のはかなさに例えられるが、韓国では次々に蕾をつけ夏から秋、3か月にわたり花を咲かせるたくましさ、健気さを愛で、国花に指定されている。
燃えるもの芯にこめたる無窮花かな  畔柳海村
d茶の花【冬】
李朝の儒教政策により寺の専売だった茶文化は衰退。現在は日本のようにポピュラーではなく、趣味的な飲料として一部に好まれている。
茶の花や南道(ナムド)の寺のをんな坂  山口禮子

4 ソウル俳句会のテーマBEST5
ソウル俳句会で多く詠まれているテーマ5題を挙げる。
a連翹・ケナリ【春】
日本では里山など連翹は鄙びたところの花というイメージだが、ソウルでは街中に、河川敷に、高速道路の路肩に、あらゆるところに奔放に咲き、春を告げる。
行く処連翹の花瀧をなす  長谷川櫂
地より湧き崖よりふりてケナリかな  石川桃瑪
館まで道明くしてケナリ垣   呉花梨(オカリン)
ケナリ咲く図書館裏のかくれんぼ   雨宮白路
b市場・露店
南大門、東大門の大型市場をはじめ、昔ながらの在来市場、水産市場、韓方薬市場、そしてさまざまな露店では韓国のエネルギーが全開している。

山をなす古物市の夏衣  原浩朗
着ぶくれの店番大蒜剥きながら  池端さち
鮟鱇の生肝白くはみ出たる   湊月呻
冬晴や薬令門の香を潜る    金和園(キムファオン)
寒月と別れ屋台の人となる  山口嵩史

c王宮
李朝の都、ソウルには五つの王宮があり、それぞれが悲喜交々の歴史の舞台であり、往時を偲ぶだよすがになっている。住民にとっては大都会にありながら木々を蓄えたオアシスでもある。
衛兵の眉の緩みぬ春隣  安藤脩壱
交泰殿妃なき御苑の春しぐれ    康順子(カンスンジャ)
徳寿宮鳥戯れる茂りかな  吉田鎭雄
宮殿の森の夏蝶見てしまふ   荻野ゆ佑子
d漢江(ハンガン)
韓半島江原道南部からソウル市中央を流れ、黄海に注ぐ全長514kmの大河。河川敷にはグランド、遊歩道などが設けられ、市民の憩いの場になっている。
朝もやに漢江抱きしめられる春   江上一郎
漢江の太き橋脚大西日    堀妙子
秋澄むや向ふの橋の名は知らず   杉山杉久
漢江を龍に変えむと秋の雨   平松かつみ
eDMZ 非武装地帯
1953年、朝鮮戦争休戦協定朝鮮戦争の休戦ラインとして北緯38度付近に南北軍事境界線が発効し、DMZは韓国、北朝鮮のそれぞれ幅2kmの非武装地帯韓のこと。
鳥雲に臨津江の負のあたり  神山洋
冬空や視界の先まで分断線   横山全徳
駅頭の迷彩服に冬尖る  澤田俊樹

5 韓国の生活 食べる・着る・住む
a旧正月と秋夕【新年・秋】
韓国の二大名節。陰暦1月1日、8月15日で、その前後を合わせ3日間が公休日となる。多くの人が宗家に出向き、親族がともに過ごし、祖先の祭祀、墓参をする。目上の人にする新年の挨拶が歳拝(セベ)。
歳拝する子親より高き背を伏して  李秀珉(イシュウミン)
秋夕や帰省の列に吾子探す  黄玉(コウギョク)
bパッピンス 氷小豆
氷小豆だが、一人では食べきれないボリューム。
パッピンスただ自堕落に刻過ぎぬ   畔柳その子
c冷麺 ネンミョン【夏】
冷麺に鉄鋏入り冷え増せり    前原正嗣
e蔘鷄湯(サムゲタン)・補身湯(ポシンタン)【夏】
三伏の日に暑さに負けぬよう食する滋養食。補身湯は犬肉の鍋料理。
蔘鷄湯おもてに顔出す鶏の脚  川合鉢
ポシンタンうちのポチには秘密です  牛嶋竹志
fキムヂ(ジ)ャン【冬】
本格的な冬に入る前に越冬用のキムチを漬ける。一家、近隣の女性が集まり、大量の白菜を漬ける。
キムジャンのキムチの軸の未だ硬き  齊藤歩
キムジャンのたらいを洗うばかりなり 柿嶋慧
fトゥルマギ【冬】
韓国の伝統的な外套。
綿入れの嫁入りトゥルマギ猶今も  沈丁花
g温突(オンドル)【冬】
床暖房。かつては薪、練炭の煙を床下に通して床を温めたが、現在は床の中に這わせたパイプにボイラーで沸かした湯を通して温めるスタイルが一般的。
オンドルの床で微睡む猫となる  伊牟田真紀
g 竹夫人【夏】
日本ではほとんど見られなくなったが、韓国では市場、トラックの移動販売などで今も売られている。
竹婦人連れて帰るか故郷へ   木村順平    ※竹婦人は作者の造語

***********
<句会報告> 選者:山口禮子、趙栄順、長谷川櫂
山口禮子 選
【特選】
ふるさとを行つたり来たりハンモック    三玉一郎
オボイナル連なる家譜といふ重み      金和園
カチ鴉鳴き交はしけり五月闇        飛岡光枝
先生の日は先生の本を読み         三玉一郎
月涼しマッコリ注ぐ大薬缶         西川遊歩
明易や朝なほ灯す東大門          趙栄順
半べそに五月連休終りけり         鈴木美江子
初夏や満天星丸く丸く刈り         原浩朗
ほととぎす蒼い夜明けを連れてくる     西夏
【入選】
あの頃はいつもこの席パッピンス      延与紀舟
ゆふぐれの人を待つ人みずすまし      鈴木沙恵子
木浦までなんじゃもんじゃの道案内     高瀬澪
新調の靴は弾くよ新樹光          士道
韓国の四季知るうれしさ立夏かな      谷口正人
田水張るど真ん中行く予讃線        小川裕司
顕忠日硝煙しむる木の十字         金和園
ブラックデー一世を笑ひ飛ばしけり     三玉一郎
薫風や一升餅を負ふて立つ         齋藤嘉子
糊代のずれたる口や鯉のぼり        士道
山と積む金真桑の夏来たりけり       葛西美津子
りうりうと風従へて楠若葉         きだりえこ
この橋を渡れば俺も山桜          西夏
篠の子の剥かれて皮の堆し         石川桃瑪
亀の子や大器のへんりん蔵したる      園田靖彦
筑波嶺と空分かち合ふほととぎす      きだりえこ

趙栄順 選
【特選】
月光の肌ひやひやと竹夫人         長谷川櫂
おろされて肩で息する鯉幟         園田靖彦
悠久の漢江とゆくヨットかな        吉田静生
黒揚羽離宮に影を濃く淡く         金澤道子
月涼しマッコリ注ぐ大薬缶         西川遊歩
山と積む金真桑の夏来たりけり       葛西美津子
鵲に自由自在の夏来る           イーブン美奈子
大盥ぶつかり合うて金真桑         飛岡光枝
短夜や甕にマッコリ香りたつ        葛西美津子
短夜をましろき韓の酒酌みて        山口禮子
【入選】
ふるさとを行つたり来たりハンモック    三玉一郎
冷麺に銀のはさみを入れにけり       飛岡光枝
母の日や故郷へ贈る杖一本         雨宮白路
更衣愛することの難しさ          原山のび太
カチ鴉鳴き交はしけり五月闇        飛岡光枝
参鶏湯滾れ夏負け吹き飛ばせ        西川遊歩

長谷川櫂 選
【特選】
冷麺に銀のはさみを入れにけり       飛岡光枝
母の日や故郷へ贈る杖一本         雨宮白路
悠久の漢江をゆくヨットかな        吉田静生
月涼しマッコリ注ぐ大薬缶         西川遊歩
山と積む金真桑の夏来たりけり       葛西美津子
【入選】
母の日や母とならんとする人と       藤岡美恵子
夏きざす鎌倉は山高からず         金澤道子
縁いま国境を越え青あらし         三玉一郎
明易や朝なほ灯す東大門          趙栄順
草餅や娶り娶られ五十年          園田靖彦
金真桑ぶつかり合うて大盥         飛岡光枝
明易の空鳴き渡るカチ鴉          葛西美津子
短夜や甕にマッコリ香りたつ        葛西美津子
ゴスペルの手打ち足踏み聖五月       鈴木美江子
母の日や羽田の沖で散骨す         新名隆
鳳仙花近くて近き国であれ         藤岡美恵子
父母の日や光州ははるか手を合はす     奈良握
ほととぎす蒼い夜明けを連れてくる     西夏

7/6 (土) ズームできごさい+ 「硯がひらく世界」

きごさいBASE 投稿日:2024年5月12日 作成者: dvx223272024年7月14日

さまざまなジャンルから講師をお迎えして季節や文化に関わるお話をお聞きする「きごさい+」
今回の講師は、甲斐雨端硯本舗 13代目硯匠 雨宮弥太郎さんです。どうぞぜひご参加ください。
講演の後、句会もあります。(選者:雨宮弥太郎、西川遊歩、長谷川櫂)

日 時 : 2024年7月6日(土) 13:30~16:00
演 題 : 硯がひらく世界
講 師 : 雨宮 弥太郎 (あめみや・やたろう)

プロフィール:
甲斐雨端硯本舗 13代目硯匠
1961年、山梨県鰍沢元禄3年(1690年)より硯制作に携わる弥兵衛家に生まれる。子供時代より芸術への憧れが強く東京藝術大学彫刻科に入学。1989年 同大学院を修了。1990年より日本伝統工芸展に出品をはじめ、現在日本工芸会正会員。硯を現代彫刻として制作している。2013年米国フロリダ州森上博物館「Contemporary KOGEI Styles in Japan」 2017年奈良薬師寺「平成の至寶八十三選」展 日本橋三越にて個展など出品している。

講師からのひと言
硯は墨を摩るための道具にとどまらず 硯に向かい墨を摩るうちに 心を鎮め自分の内面と向き合うための道具であると考えています。いわば〝精神の器〟として現代の造形としての可能性を感じています。悠久の時間を経てきた原石を削り磨くというシンプルな制作過程の中に自分の培ってきたものが形に宿ると考えています。
硯に向き合うことで自分を開放し宇宙のリズムと共鳴する。私には俳句も季語という魔法の鍵の助けを借りて自分の内面に大自然をかたちづくるというイメージがあります。
硯について語りながら〝創造=想像すること〟について考える事ができたらと思っております。

2024年7月6日(土) 13:30~16:00  (13:15~ Zoom入室開始)
13:30~14:45  講演
14:50~15:20  句会(選句発表)
15:20~16:00  西川遊歩(きごさい編集委員)との対談、質疑応答

ズームのURL、句会の入力フォームのURLは、申込みをされた方に7/2頃までにメールで配信致します。かならずご確認ください。
句会:当期雑詠5句 前日投句です。 選者:雨宮弥太郎、西川遊歩、長谷川櫂
前日7/5(金) 17時までに所定のフォームから投句。ただし句会の参加は自由です。

韓国、仁荷大学に植樹した山桜の写真です

きごさいBASE 投稿日:2024年4月14日 作成者: dvx223272024年4月21日

季語と歳時記の会(きごさい)の仕事の一つに「山桜100万本植樹計画」があります。
第1回目は2008年5月、新潟県加茂市の雙璧寺に120本を植樹しました。二回目は翌年2009年10月、韓国仁川市にある仁荷(インハ)大学校キャンパスに3本を植樹しました。
仁荷大学の王淑英先生からその山桜の写真が送られてきましたので掲載いたします。今日(4/14)の朝撮った写真です。クリックすると大きくなります。




3月きごさい+報告「心ときめく雛祭りの菓子」

きごさいBASE 投稿日:2024年4月9日 作成者: kasai33412024年4月21日

3月16日、第33回きごさい+がズームで開催されました。講師は、きごさい+ではおなじみの株式会社虎屋・虎屋文庫主席研究員の中山圭子さん。中山さんの講座は今年で8年目、春夏秋冬の和菓子に続いて羊羹、落雁、南蛮菓子と毎回好評です。そして今回のテーマは「心ときめく雛祭りの菓子」でした。

講座 レポート 

3月3日の雛祭りが過ぎると、お嫁に行くのが遅れるからと早々にお雛様を片づけられてさびしかった。「旧暦で雛の節句を祝う地域もある」という中山さんのお話の通り、前に訪ねた山国の旧家では3月下旬というのに立派なお雛様が飾ってあって心が華やいだ。ずっと飾ってあればいいのに、と思わないこともないが、節句という節目があることが、一年を過ごしていく上で大切なのだろう。

雛人形も雛菓子も愛らしく美しく、女子限定の楽しいお祭り。中山さんのお話を聞くまではそんな単純なイメージだったが、雛祭りのルーツは中国伝来の厄払いの行事という。そういえば流し雛という儚い行事も今に続いている。そして雛菓子にも深い意味と歴史があった。

レジュメにそって、画面には生き生きとした錦絵や貴重な史料、美しく可愛らしい雛菓子の画像が次々と紹介され、中山さんの明快で楽しいお話が始まった。

〇雛祭りの歴史

 もともと雛祭りは上巳(じょうし)の節句と呼ばれ、中国の風習にならい、禊(みそぎ)や穢(けが)れ祓いが行われていた。雛人形の始まりも、身の穢れを移して川に流した「ひとがた」(形代(かたしろ)・後の流し雛)といわれる。人形を飾る女子の節句として定着するのは江戸時代に入ってからで、幕府が五節句の一つとしたことから、全国各地に広まった。

〇雛菓子について

上巳の節句には、厄祓いの意味から、香りの強い草餅を用意する習わしがあった。平安時代には、母子(ははこ)草(ぐさ)(春の七草のひとつ、ごぎょう)を餅に搗き交ぜた母子餅が主流だったが、雛祭りが定着する江戸時代には蓬を使ったものが多くなる(一説に母と子を搗き混ぜるのは縁起が悪いという解釈がある)。雛壇に供える菱餅は、草餅と白い餅を組み合わせた、緑と白の配色が一般的であった。菱餅の意味については諸説あるが、古代中国の陰陽思想の影響が強いのではないかと考えられる。

菱餅の形を不思議に思っていたが陰陽思想の関連とは驚いた。菱の形は女性の象徴、五月の節句の粽は男子の象徴、という解釈もあるのが興味深い。また、現在の菱餅は赤、白、緑の三色三段だが、江戸時代は緑と白の餅を交互に奇数に重ねていたのが文献に見られ、錦絵にも描かれている。何点か紹介された錦絵は雛段の豪華さや雛祭りを楽しむ人の様子が生き生きと描かれて楽しかった。

このほか、雛菓子として紹介されたのは、

〇雛あられ…煎った糯米、はぜ(爆米、葩煎)が原形。 関西の雛あられはあられやおかき類である。

〇あこや(いただき・ひっちぎり)…京都でよく見られる雛菓子。「あこや」とは真珠貝のことで、餡をいただいているので「いただき」、先端をちぎったような形から「ひっちぎり」ともいう。

「あこや」は不思議な形、そして色も可愛くてとても魅力的な菓子だ。江戸時代からあったが、雛菓子として江戸では定着しなかったとのこと。虎屋では京都店限定で雛節句の期間のみ販売しているそうだ。手に取って見てみたい、食べてみたい、東京で買えないとはとても残念。

〇そのほか…生菓子・金花糖・有(ある)平(へい)糖(とう)・落雁など

生菓子は桃の花や果実、蛤、お雛様などをモチーフにしたものが見られる。金花糖は砂糖液を木型などに流し込んで固めたもの。鯛や果物、野菜などさまざまな形があり、一般に中身は空洞である。有平糖は南蛮菓子のひとつで、飴細工である。

『宝暦(ほうりゃく)現来集(げんらいしゅう)』(1831自序)によれば、1770年代頃には、鯛や松竹梅をかたどった安い落雁などの雛菓子を行商するものもいたそうだ。また、幕府の御用学者、屋代(やしろ)弘(ひろ)賢(かた)らによる『諸国風俗問状答』(1813頃)は、各地の行事についてのアンケート調査のようなもので、雛祭りについての項目もある。草餅に母子草を使わない地域が多い中、出羽国秋田領や丹後国(京都府)峯山領などでは蓬同様、使用していること、備後国(広島県)深津郡本庄村では、昔は母子草で今は蓬にかわったことなどがわかるという。

江戸時代の雛菓子については、御所御用をつとめた虎屋の雛菓子の記録も紹介された。貞享4年(1687)3月3日には小さな饅頭を3000ばかり納めたそうだ。元禄年間には、模様入りの惣銀の折や杉重箱に菓子を詰め、納めたとのこと。小さい雛菓子を納める専用の雛井籠や重箱なども紹介されたが、なんて豪華で雅なこと! 御用記録の中には、雛菓子の大きさ(1.5~2㎝)がわかる略図を書いたものもあり、そんな小さな雛菓子が作れるの、とため息がでる。美しい入れ物に詰められたたくさんの愛らしい雛菓子、ご覧になった宮中のお姫様の驚きと喜びはいかばかりかと思う。

なお、現在にも伝えられる雛菓子は地方色豊かで、くじ(ぢ)ら餅(山形)、花饅頭・きりせんしょう(岩手)、金花糖(石川ほか)、ひな餅(島根)、からすみ(岐阜・愛知)、桃カステラ(長崎)、三月(さんぐゎち)菓子(ぐゎーし)(沖縄)ほかいろいろあるそうだ。

***

中国から伝わった厄を払う行事(形代を流す)が女子の成長を祝う華やかな雛の節句に、強い草の香りで厄を払う母子餅が色とりどりの可愛らしい雛菓子に、と江戸時代中期以降、日本では明るく楽しい雛祭りとして発展・定着してきた。一方中国では雛祭りのような行事は聞かないという。厄払いの食べ物を美しくおいしい菓子に変えていくのも日本人の特性かもしれない。また小さなものを愛でる感性は日本人が一番のような気がする。春のひと日、雛菓子の歴史と美に心ときめき、雛の節句の本来の意味を知る充実したお話だった。(葛西美津子記)

 

参考図書

亀井千歩子『日本の菓子』東京書籍 1996年
亀井千歩子『縁起菓子・祝い菓子』淡交社 2000年
『聞き書ふるさとの家庭料理 <別巻> 祭りと行事のごちそう』農文協編 2004年
服部比呂美「庄内地方における雛祭りの飾り物‐雛菓子と押絵雛菓子‐」
無形文化遺産研究報告第2号 所載 2008年
溝口政子・中山圭子『福を招くお守り菓子』講談社 2011年
つるおか伝統菓子 令和3年度・令和4年度「鶴岡雛菓子」調査報告書 (ネットで閲覧可)

開催中の虎屋の展示

  • 和菓子とマンガ

東京ミッドタウン店ギャラリー(六本木) 6月26日(水)まで

  • 家紋と和菓子のデザイン展

  虎屋 赤坂ギャラリー   5月30日(木)まで

 

虎屋文庫について

和菓子文化の伝承と創造の一翼を担うことを目的に、昭和48年(1973)に創設された「菓子資料室」。室町時代後期創業の虎屋に伝わる古文書や古器物を収蔵、和菓子に関する資料収集、調査研究を行っている。学術研究誌『和菓子』を年1回発行。

非公開だが、お客様からのご質問にはできるだけお応えしている。

株式会社 虎屋 虎屋文庫 〒107-0052 東京都港区赤坂4-9-17 赤坂第一ビル2階

E-mail  bunko@toraya-group.co.jp TEL 03-3408-2402   FAX 03-3408-4561

 

句会報告   選者=中山圭子、長谷川櫂

◆ 中山圭子 選

【特選】
ひとひらの花びら紛れ雛あられ     飛岡光枝
遠山の雪を集めて金花糖        飛岡光枝
見えぬもの見てゐる母よ桃咲いて    イーブン美奈子
まだ夢を見てゐる箱の桜もち      飛岡光枝
花時の闇の向かふの戦火かな      宮本みさ子
雛あられこぼれて遠き昔かな      齋藤嘉子

【入選】
畳むとき緋毛氈より雛あられ      きだりえこ
祖母が煎る大地の色よ雛あられ     齋藤嘉子
どこぞより一声聞こゆ鶯餅       長谷川冬虹
桃の花けぶれる里に雛の家       葛西美津子
永遠にあれ戦なき世の雛祭       澤田美那子
白は雪淡紅は花雛あられ        長谷川櫂
春愁が色とりどりや雛あられ      三玉一郎
よもぎ餅搗いてみどりの杵と臼     宮本みさ子
雛あられくすくす笑ひだしさうな    葛西美津子

◆ 長谷川櫂 選
【特選】
まだ夢を見てゐる箱の桜もち      飛岡光枝
【入選】
嬰の目に春のつぼみがひらくかな    趙栄順
クレヨンで目鼻もらひぬ紙雛      齋藤嘉子
羊羹の切り口濡れて雛の間       宮本みさ子
草餅を少し温めて分け合うて      奈良握

「動物季語の科学的見解(鳥類)」を追加しました

きごさいBASE 投稿日:2024年4月8日 作成者: dvx223272024年4月10日

 東海大学教養学部の藤吉正明先生による「動物季語の科学的見解」の追加です。二回目は鳥類の73季語、

赤鬚(あかひげ) 鷽(うそ) 鵲の巣(かささぎのす) 河烏(かわがらす) 河原鶸(かわらひわ) 小綬鶏(こじゅけい) 鷺の巣(さぎのす) 雀の巣(すずめのす) 巣箱(すばこ) 燕の巣(つばめのす) 鴉の巣(からすのす) 鳩の巣(はとのす) 松毟(まつむしり) 山鳥(やまどり) 白鳥帰る(はくちょうかえる) 引鶴(ひきづる) 岩燕(いわつばめ) 山椒喰(さんしょうくい) 仙台虫喰(せんだいむしくい) 頬白(ほおじろ) 藪雨(やぶさめ) 青鷺(あおさぎ) 蒿雀(あおじ) 青葉木菟(あおばずく) 青鳩(あおばと) 赤翡翠(あかしょうびん) 赤腹(あかはら) 鯵刺(あじさし) 雨燕(あまつばめ) 桑扈(いかる) 磯鵯(いそひよどり) 岩雲雀(いわひばり) 海猫(うみねこ) 蝦夷虫喰(えぞむしくい) 柄長(えなが) 大瑠璃(おおるり) 郭公(かっこう) 雷鴫(かみなりしぎ) 河鵜(かわう) 黄鶲(きびたき) 黒鶫(くろつぐみ) 鳧(けり) 小雀(こがら) 五十雀(ごじゅうから) 駒鳥(こまどり) 小瑠璃(こるり) 笹五位(ささごい) 鮫鶲(さめびたき) 三光鳥(さんこうちょう) 四十雀(しじゅうから) 雪加(せつか) 玉鴫(たましぎ) 筒鳥(つつどり) 虎鶫(とらつぐみ) 野鶲(のびたき) 鷭(ばん) 日雀(ひがら) 便追(びんずい) 仏法僧(ぶっぽうそう) 頬赤(ほおあか) 星鴉(ほしがらす) 眉白(まみじろ) 水薙鳥(みずなぎどり) 溝五位(みぞごい) 眼白(めじろ) 眼細(めぼそ) 山雀(やまがら) 山翡翠(やませみ) 葭五位(よしごい) 夜鷹(よたか) 雷鳥(らいちょう) 瑠璃鶲(るりびたき) 巣立鳥(すだちどり)

 以上季語の解説が新しくなりました。ぜひ、お読みください。今後は、鳥類の追加や魚類、爬虫類、昆虫などについての改訂も予定しております。
 なお、今回の改訂にあたって引用及び参考にした文献は以下の通りです。

引用及び参考文献
・叶内拓哉・浜口哲一(二〇〇八)新装版山渓フィールドブックス十五 野鳥、山と渓谷社
・小林桂助(一九九六)エコロン自然シリーズ 鳥、保育社
・小宮輝之(二〇一〇)増補改訂フィールドベスト図鑑 日本の野鳥、学研教育出版
・高野伸二(二〇一五)増補改訂新版 フィールドガイド 日本の野鳥、日本野鳥の会
・高野伸二(一九九六)山渓カラー名鑑 日本の野鳥、山と渓谷社
・戸塚学・箕輪義隆(二〇一二)身近な野鳥観察図鑑、文一総合出版
・中村登流・中村雅彦(一九九五)原色日本野鳥成体図鑑(水鳥編)、保育社
・中村登流・中村雅彦(一九九五)原色日本野鳥成体図鑑(陸鳥編)、保育社
・松田道生(二〇〇八)日本の野鳥図鑑、ナツメ社
・本山賢司・上田恵介(二〇〇六)鳥類図鑑、東京書籍

きごさい 第十六号が出ました

きごさいBASE 投稿日:2024年3月27日 作成者: dvx223272024年4月2日

特集 AI俳句の現在
AI&人間 合同誌上句会           きごさい編集部編
誌上座談会AI句作を語る           きごさい編集部編
AI一茶くんの仕組み             山下倫央
考察人間はなぜ俳句を詠むのか         藤英樹

明治以降に生まれた季語            橋本直
牧野富太郎が名付けた身近な植物        藤吉正明
『新版角川俳句大歳時記』ここが変わった    高橋真樹子

連載 加藤楸邨×大岡信 対談④
検証 草田男の「楸邨氏への手紙」 構成・解説 西川遊歩

連載 末期的大衆社会をどう乗り越えるか⑤
俳句はネット社会を生き抜けるか        関根千方

HAIKU+(今何が問題か)
季語と暮らし                 谷口智行

きごさい+(講座+句会)
小倉百人一首 競技かるたの世界        ストーン睦美
台湾映画の世界「悲情城市」から多様性の台湾へ 林ひふみ
異国への憧れ、南蛮菓子あれこれ        中山圭子
季節をめぐる鳥の世界             樋口広芳

動物季語の科学的見解 鳥類(春・夏)     藤吉正明

「一月の川一月の谷の中」はなぜすばらしいのか 長谷川擢

第十二回きごさい全国小中学生俳句大会報告

第十三回 きごさい全国小中学生俳句大会 表彰式

きごさいBASE 投稿日:2024年3月20日 作成者: dvx223272024年3月20日

3月9日(土)都立清澄庭園内、大正記念館におきまして「第十三回きごさい全国小中学生俳句大会 表彰式」が行われました。
授賞式参加のために来場した皆さまが、清澄庭園の池を巡り、ご家族そろって笑顔で大正記念館に入ってこられ受付をなさる姿が印象的でした。保護者の方から「三月の青空と優しいひかりそして澄み切った空気、開放的なガラス張りの記念館とお庭、鮮やかな花と鳥たち」と表現された庭園はいつまでも見飽きない景色でした。
今回の「きごさい全国小中学生俳句大会」には、大賞、特選、入選、佳作、研究会賞、学校賞の表彰者約30名と、保護者約50名、合わせて80名を超える皆さまが、東京都内はもちろんのこと、大分県や山口県、また高知県や京都府など遠方からもお越しになりました。本俳句大会では、外国の日本人学校を含め、29都道府県132校から17,000名の応募があり、過去最高の応募数となりました。
表彰式では、壇上の受賞者が緊張しながらも、賞状を客席にご披露くださる場面も見られ、会場から盛んな拍手が送られておりました。

【大賞】
あせいっぱいぼくのからだであそんでる
土佐市立高岡第一小学校
五年 関 隆佑さん

髙田正子氏
【特選】
いますぐにはしりだしたいとかげかな
世田谷市立桜丘小学校
三年 濱﨑 葵さん

ドッカーンほえているんだ大花火
土佐市立高岡第一小学校
四年 中平琉輝矢さん

満月へ道がつながるはしの上
江東区立川南小学校
六年 伊藤 翔さん

長谷川櫂氏
【特選】
父がつくる雑煮の味は母の味
山口大学教育学部附属光中学校
三年 久保めぐみさん

終戦日影も子どももみな消えた
大分市立大在小学校
五年 松尾彩希さん

あせいっぱいぼくのからだであそんでる
土佐市立高岡第一小学校
五年 関 隆佑さん

小山正見氏
【特選】
夏祭りみこし空まで持ち上げる
静岡学園中学校
三年 宮村 圭さん

マイルール白線たどる春の道
足立区立島根小学校
五年 杉瀬 葵さん

青空を貸し切りにして運動会
江東区立明野小学校
六年 安井彬人さん

その後行われた講評会では、長谷川櫂氏、髙田正子氏、小山正見氏、飛岡光枝氏、上澤篤志氏による鑑賞講評とともに、受賞者自身の飾らない生の思いも語られ、受賞作品をより深く多面的に味わう機会になりました。
表彰式では、副賞として、書道家であり、日本学校俳句研究会理事の白川鼎心氏が受賞句を揮毫くださった色紙(大賞)、きごさい代表の俳人、長谷川櫂氏著の『四季のうた』(中公文庫)、『こども歳時記』(小学館)、開明の墨汁が贈られました。
昨年にひき続き、オンライン(リアルタイム)での表彰式参加者も募ったところ、7名の児童生徒とそのご家族さまからご希望があり、美しい画面のモニターをとおして、賞状を受け取ったり、コメントを返したりする場面も見られ、モニター越しに全体写真に参加するなど、工夫の活かされた式となりました。
今回から、読売新聞社東京本社のご後援をいただけるようになりました。「きごさい全国小中学生俳句大会」の重要性が理解され、子どもたちの感性を磨く場がますます広がっていきますこと、大変有り難く存じます。ご協賛くださっている(株)小学館、開明(株)をはじめ、ご協力くださった清澄庭園、江東区芭蕉記念館等、関係するすべての皆さまが全面的にご支援くださり、おかげさまで会場に集ったすべての方々が潤いのある、豊かな時間をともに味わう表彰式となりました。この場をお借りし深く感謝申し上げます。

5/12(日) ズームできごさい+ 「韓国の四季と生活」

きごさいBASE 投稿日:2024年3月17日 作成者: dvx223272024年5月12日

さまざまなジャンルから講師をお迎えして季節や文化に関わるお話をお聞きする「きごさい+」
今回の講師は、俳人で長きにわたってソウル俳句会を牽引されてきた山口禮子さんです。
どうぞぜひご参加ください。
講演の後、句会もあります。(選者:山口禮子、趙栄順、長谷川櫂)

日 時 : 2024年5月12日(日) 13:30~16:00
演 題 : 韓国の四季と生活 ―ソウル俳句会の俳句から―
講 師 : 山口 禮子 (やまぐち・れいこ)

プロフィール:
1950年、東京都葛飾区生まれ。慶應義塾大学 文学部卒。史学科民族学考古学専。
1991年渡韓、延世大学、梨花大学語学堂にて韓国語、成均館大学大学院にて考古学を習得。1995年4月、ソウル俳句会入会。1996年よりソウルガーデンホテルに勤務。
2006年より2023年までソウル俳句会主宰。現在、同句会顧問。
『歳時記学 第3号』、『半島 山口禮子句集』に収録した「覚書 韓国歳時記」では50余の韓国季語を紹介している。

講師からのひと言
ソウル俳句会は1993年3月、旭化成のソウル駐在員だった故戸津真乎人氏の声掛けで日韓の会員10名ほどの日韓友好の草の根交流をめざす同好会として発足した。師もなく派もなく、ただ地縁だけで結ばれた俳句会ではあるが、31年間の時と5代の主宰を経て、現在はソウルの本部、および帰国者によるなにわ支部、東京支部と合わせて81名を擁し、本部では月2回の定例句会、各支部では不定期に句会を行っている。
臨場感を定法の一つとする俳句。これまでに詠まれた数千、いや数万になろうかという莫大な句に、韓国ならではの風景、生活、季節感の描かれたものを拾ってみることは可能だろう。それらの句を通して、韓国への理解が深められたらと思う。

2024年5月12日(日) 13:30~16:00  (13:15~ Zoom入室開始)
13:30~14:45  講演
14:50~15:20  句会(選句発表)
15:20~16:00  趙栄順(きごさい編集委員)との対談、質疑応答

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今夜はご馳走 五月:新ごぼうとチーズのチップ

 旬のものにはなにかと「新」がつく。それは紛れもなく若さを示す。つまりアクも少ない。その代表格は「新ごぼう」だろう。泥付きをササガキすれば、新鮮な香が強く立ち上がる。それは土の香り。土の香りにさえ旨味を感じるのは味覚が多様な証。きんぴらのような定番だけでなく、昨今はごぼう料理も多様化。ピザ用チーズとササガキごぼうをレンジでチンすれば、ビールや酒のつまみに美味しいごぼうチップが出来上がる。

新ごぼう土の力の香りかな 越智淳子


  • これまでの「今夜はご馳走」  越智淳子
  • これまでの「今月のお菓子」  越智淳子
  • これまでの「今月の和菓子」 葛西美津子

きごさい歳時記へ

季節文化を発信

NPO法人「きごさい」(季語と歳時記の会)は、ネット歳時記「きごさい」を中心に季節文化を発信する仕事をしています。その活動はボランティアのみなさんの力で運営されています。賛同される方はご参加ください。

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きごさいの本

「きごさい」第17号購読可
きごさい
1,500円
2025年3月刊行


『大人も読みたい こども歳時記』(10刷)
長谷川櫂監修 季語と歳時記の会編著
小学館
1,600+税
2014年3月刊行


『花のテラスで Ⅱ』
福島光加
花神社
2300+税
2018年4月刊行


『花のテラスで』
福島光加
花神社
1,900+税
2014年9月刊行


「第14回全国小中学生俳句大会作品集」購読可
きごさい
500円
2025年3月刊行


「大震災をよむ」購読可
長谷川櫂選 きごさい
1,000円
2011年5月刊行


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